免疫沈降や共免疫沈降に影響する要因と最適化まとめ

免疫沈降や共免疫沈降に影響する要因と最適化まとめ

はじめに

免疫沈降 (IP; Immunoprecipitation)や共免疫沈降 (Co-IP; Co-immunoprecipitation)は、担体に固定した抗体により、特定のタンパク質またはタンパク質-タンパク質複合体を濃縮・精製する手法です。タンパク質の発現や翻訳後修飾、タンパク質-タンパク質間の相互作用を検出するプロテオミクスのワークフローで利用され、精製・濃縮したタンパク質はウェスタンブロッティングやELISAによる解析や質量分析計による定量定性的な解析に利用されています。

免疫沈降や共免疫沈降は抗体を利用したアフィニティ精製法ですが、実際には試料や抗体などのさまざまな要因が実験結果に影響するため、十分な量と純度の目的タンパク質が単離できるようにまでには、経験的な最適化が必要となることがあります。今回は、免疫沈降や共免疫沈降に影響する要因と最適化について簡単にご紹介します。

Lysis BufferやWash Bufferの選択

Lysis Bufferに界面活性剤を用いる場合、細胞膜(脂質二重層)を溶解でき、さらに抗原抗体反応を阻害しない組成で調製しなくてはなりません。たとえば、最も一般的なLysis BufferであるRIPA Bufferには0.1% SDSが含まれ、細胞からの水溶性タンパク質の抽出のほか一部の膜タンパク質などの疎水的なタンパク質も可溶化できます。ただし、SDSは免疫沈降における抗原抗体反応に影響を与えることがあり、免疫沈降ではRIPA BufferからSDSを抜いた組成で使用します。Pierce IP Lysis Bufferも25mM Tris-HCl, pH 7.4, 150mM NaCl, 1mM EDTA, 1% NP-40, 5% glycerolで構成されています。

immunoprecipitation-fig1

図1 Pierce IP Lysis BufferとRIPA Bufferにより調製した細胞ライセートの免疫沈降。(Stressgen)またはanti-PP2A antibody (Millipore)を用いて、EGFRとPP2Aを免疫沈降しました。洗浄にはライセートの調製に使用した各Bufferを用いました。ライセートと溶出フラクションの各5%をウェスタンブロッティング解析に用い、anti-EFGR またはanti-PP2Aによりプローブ、SuperSignal West Dura Substrate により検出しました。

Pierce IP Lysis BufferはHeLa, Jurkat, A431, A549, NIH 3T3, HepG2, COS-7など代表的な細胞ラインで細胞の溶解性を試験済みです。106のHeLa細胞からは約10mgの細胞ペレットが調製されますが、100ulのPierce IP Lysis Bufferにより、ここから約3ug/ul (300ug)の細胞ライセートを調製できます。

immunoprecipitation-fig2

図2 共免疫沈降産物のウェスタンブロッティング解析。Pierce Co-IP Kitを用いて、25 ulのレジンに20ugまたは40ugのanti- EGFRを固定しました。 IP Lysis/Wash Buffer (25mM Tris, 150mM NaCl, 1mM EDTA, 1% NP-40, 5% glycerol; pH 7.4) で調製したHeLa細胞ライセート (2,000 ug)をPierce Control Agaroseでプレクリアした後、anti- EGFRレジンと1時間インキュベートしました。IP Lysis/Wash Bufferで洗浄した後、1X Conditioning Bufferで洗浄して、免疫沈降したタンパク質をElution Bufferにより溶出しました。溶出フラクションの20%を4-20%トリスグリシンゲルによる電気泳動により分離、ニトロセルロース膜に転写しました。anti-EGFRとanti-EGFによりプローブ、EGF受容体とEGF複合体を検出しました。

Wash Bufferの選択

免疫沈降における洗浄バッファーの選択では、相互作用特異的なタンパク質の結合を維持したまま、非特異的なタンパク質の結合を破壊して除去することが重要です。電荷を持たない中性多糖ポリマーの架橋支持体であるアガロースビーズであっても、タンパク質と非特異的に結合することが知られています。免疫沈降実験においてバックグラウンドが問題になっている場合、最適な洗浄条件を経験的に決定する必要があります。相互作用の特性が既知でないかぎり、PBSやTBSなどの生理的レベルの塩とpHのバッファーから、洗浄バッファーの最適化を始めるのが一般的です。

目的の相互作用が検出された場合、次に低レベル(0.5-1 %)のNP-40, Triton X-100, CHAPS等の穏やかな界面活性剤を添加してバックグラウンドの軽減を図ります。非特異的な相互作用が解消されず、かつ目的の相互作用がまだ強い場合、静電的な相互作用を弱めるために0.5Mから1M程度まで塩化ナトリウム濃度を上昇させます。また低レベルの還元剤(1-2 mM DTTやBMEなど)はジスルフィド結合に関与する非特異的な相互作用を破壊できることもあります。Hisタグ融合タンパク質を用いたプルダウンでは低濃度のイミダゾールやEDTAの添加も検討します。

Crosslinked Co-IP

タンパク質間の相互作用が弱く、抽出/可溶化操作や洗浄操作によって相互作用が破壊されてしまう場合、細胞内または細胞表面で化学的に架橋(crosslink)してから共免疫沈降を行うこともあり、Crosslinked Co-IPと呼ぶこともあります。

細胞内での架橋には細胞膜を透過する不溶性試薬を、細胞表面での架橋を行いたい場合には水溶性試薬を用います。未知の結合パートナーを質量分析計で同定する場合、解析を容易にするため、スペーサーアーム内に還元剤で切断可能なジスルフィド結合を含む架橋剤(不溶性試薬DSPや水溶性試薬DTSSP)を用いることもあります。

最後に

免疫沈降や共免疫沈降で用いる抗体が溶出サンプルに夾雑すると、抗体由来の重鎖や軽鎖がSDS-PAGE分離やウェスタンブロッティング解析で目的タンパク質のバンドと重複することがあります。弊社ではアガロースゲルに固定化したProtein A/G融合タンパク質に抗体を架橋して用いるPierce Crosslink IP Kitや活性化されたゲルに抗体を直接共有結合させて用いるPierce Co-Immunoprecipitation Kitもご用意しております。

参考文献

この記事に関する、ご意見・ご質問がございましたら、下記フォームからご連絡ください。

お名前 (必須)

メールアドレス (必須)

勤務先・所属先

題名

メッセージ本文

 確認ページはございません。内容をご確認の上チェックを入れてください

トレーニング