難しそうで難しくない少し難しいピペットのキャリブレーション方法と計算式

難しそうで難しくない少し難しいピペットのキャリブレーション方法と計算式

キャリブレーション

ピペットのキャリブレーションとは、設定(表示)容量と実際の分注容量との差を検定することです。調整(アジャストメント) は、実際の分注量が規格に適合するようにピペットを調節することです。検定と調整を合わせてキャリブレーションという場合もあります。

Finnpipetteは全て工場出荷時に精製水によるキャリブレーションを行い、分注容量が調整されています。工場でのキャリブレーションは、重量法で行います。各ピペットの最大容量と最小容量について、それぞれ5回ずつ分注液の重量を測定して検定を行います。この検定結果は「Calibration Report」として全てのFinnpipetteに同梱されます。 Finnpipetteはユーザーサイドで簡単に再検定と調整が行えるように設計されています。

品質システムにおけるピペットのキャリブレーション

品質システムの中でのピペットのキャリブレーションの目的は、意図した正確さで分注が行われることの保証です。実際の作業ではそこまでの精度が求められていないにもかかわらず、誤差の限界値(精度規格)を、製造元の規格と同様に設定しているケースがしばしばあります。しかし、温度や湿度など環境をコントロールしていない通常のラボで、製造元の規格を満たすことはかなり困難であることにご留意ください。工場では、温度や湿度が安定した環境において、蒸留水またはイオン交換水を用いて検定を行っています。使用目的やラボの環境を考慮し、許容できる規格をそれぞれ設定するべきでしょう。あるいは、例えばEN ISO8655のような規格の値を2倍するというような方法もあります。高い精度が要求されるような場合は、工場と同様の検定環境を整える必要があるでしょう。

EN ISO8655に基づくピペットの規格

EN ISO 8655規格にはピペットの正確度と精密度の許容範囲が絶対値と相対値で示されています。それぞれの値は、空気置換方式で、容量固定のシングルチャンネルピペットの値として規定されています。容量可変のピペットの場合、名目容量(nominal volume)は最大容量に該当します。名目容量の規格(μl)がそのピペットの全ての容量に適用されます。

例:10-100μlのピペットの場合(100μlの規格値が全ての容量に適用される)
正確度(ACC)±0.8μl
精密度(SD)0.3μl

キャリブレーションに必要な機器と検定環境

天秤

分析用天秤を使用します。天秤の感量は、ピペットの検定容量に合わせて選択します。

容量範囲 最小表示(感量)
10μl未満 0.001mg
10-100μl 0.01mg
100μl超 0.1mg

検定液

通常、蒸留水またはイオン交換水を使用します。FinnpipetteではISO 3696規格“Grade 3”に適合する精製水を使用しています。検定液は、2時間以上前から検定室(キャリブレーションルーム)に置き、液温が安定してから検定を行います。

検定環境

検定は、通気のない、20°C〜25°Cの恒温室(±0.5°C)で実施します。相対湿度は50%以上必要です。特に50μl以下の容量では、できるだけ高湿度の環境にして、蒸発の影響を防いでください。

  • 検定するピペット、検定に使用するチップや検定液は検定室と同じ温度にしてください。
  • 正確な検定を行うため、新しいチップを使用し、最初に3-5回、検定液の吸排を行ってください。
  • ピペットのキャリブレーションは定期的に実施することをお勧めします。使用頻度や使用目的によって異なりますが、少なくとも年に1回以上行ってください。

検定

  • ピペット、チップ、検定液は、2時間以上前から検定室に置き、温度を安定させてください。
  • ピペットは実際に使用するピペッティング法で検定してください。
  • 容量可変ピペットの場合、下記の2つの容量で検定します。
    • 最大容量(名目容量)
    • 最小容量または最大容量の10%のうちいずれか大きい方(例:容量レンジ0.5-10μlのピペットの場合、10μlおよび1μlで検定)
  • マルチチャンネルピペットでは、左右両端のチャンネルをそれぞれ上記の2つの容量で検定します。
  • それぞれの検定容量で4~10回ずつピペッティングを行い、1回ごとに天秤で重量を測定します。
  • 測定値から、後述の式により正確度(A)と精密度(再現性、SまたはCV)を算出します。
  • 結果が規格範囲に入らない場合は、調整を行った後、再度検定を行います。

計算式

重量から容量への変換

$${ V }=\left( w+{ e } \right) \times Z$$
V = 容量(μl)
w = 重量(mg)
e = 蒸発による減量(mg)
Z = 変換係数

蒸発による減量は、特に低容量で有意の影響を及ぼすことがあります。減量分を測定するには、風袋を測定した容器に精製水を分注し、重量を記録し、ストップウォッチを押します。30秒後の重量を読み取り、減少がどのくらいになるかを確認します。通常、ピペッティング操作は10秒程度で、重量の減少は2mg前後です。蒸発トラップや容器のカバーを使用すれば、蒸発分の補正は必要ありません。変換係数Zは、検定環境の気温と気圧によって異なる密度を算定するための係数です。下記の変換係数表を参照してください。

正確度(Accuracy)

正確度は、そのピペットの実際の分注量と、設定(表示)容量との差異を示します。
$$A=V-{ V }_{ 0 }$$
A = 正確度
V = 平均値
V0=表示容量

正確度は、相対的な値として表すことができます。
$$A%=100%\times \frac { A }{ { V }_{ 0 } } $$

精密度(Precision)

精密度は、ピペッティングの再現性を示すもので、標準偏差(S)または変動係数(CV)として表されます。精密度には、ピペットの性能だけでなく、各施設で実施されている操作手順や、担当者の熟練度も大きな影響を及ぼします。
$$S=\sqrt { \frac { { \sum _{ i=1 }^{ n } }{ \left( { V }_{ i }-\bar { V } \right) }^{ 2 } }{ n-1 } }$$
標準偏差は、CV値として相対的に表すことができます。
$$CV=100%\times \frac { S }{ { V } }$$

ピペットの調整方法

検定結果が規格内に入らない場合、調整を行います(詳細については取扱説明書を参照してください)。

マニュアルピペット

  • 最小容量にセットします。
  • 付属のサービスツールをハンドル上端にある溝に差し込みます。
  • 容量を増やす場合は時計回り、減らす場合は反時計回りにサービスツールを回します。
  • 再度検定を行って規格に適合するかどうか確認してください。

電動ピペット(Finnpipette Novus)

  • MENU>OPTIONS>CALIBRATEを選択します。
  • 通常はTWO POINTS(特定の容量でキャリブレーションする場合はONE POINT)を選択します。
  • 画面にTARGETの値が表示されます。
  • EDITを押すと表示がACTUALにかわり、容量の数字が点滅します。スクロールキーで検定で得られた値に変更し、OKを押してください。
  • SAVE?と表示されますので、YESを押します。
  • 再度検定を行って規格に適合するかどうか確認してください。

変換係数表

変換係数Z(μl/mg)の値は温度と気圧の関数となります。以下に蒸留水の変換係数を示します。
pipetting-guide9-fig1

ISO8655 誤差の許容範囲

シングルチャンネルピペット

pipetting-guide9-fig2

マルチチャンネルピペット

pipetting-guide9-fig3

シングルチャンネルピペット(容量固定)

pipetting-guide9-fig4

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