組織染色における固定化まとめ|知っておきたい!タンパク質実験あれこれ 第18回

組織染色における固定化まとめ|知っておきたい!タンパク質実験あれこれ 第18回

前回は、免疫組織化学(Immunohistochemistry; IHC)の概要をご紹介しました。今回は免疫組織化学において重要なステップである固定化についてもう少し詳しい内容をご紹介します!

知っておきたい!タンパク質実験あれこれ 第17回 よくわかる組織染色の基礎知識知っておきたい!タンパク質実験あれこれ 第17回 よくわかる組織染色の基礎知識
免疫組織化学は、組織上の目的成分の存在や局在を顕微鏡下で可視化するために、特異抗体を利用して標的抗原を検出する方法です。免疫組織化学は、生物学的な研究目的だけでなく、病理診断や薬剤開発にも利用されています。今回は、免疫組織化学実験の各ステップを順にご紹介していきます。

固定化の目的

免疫組織化学における固定化には、次の4つの目的があります。

  • 細胞の形態や組織の構造を安定化
  • タンパク質分解酵素の不活化
  • 加工や染色処理に対するサンプルの強化
  • 微生物のコンタミネーションや腐蝕を抑制

固定化の方法

免疫組織化学における固定化は、分子架橋やタンパク質不溶化による化学的な方法で行います。また、サンプルや標的抗原によっては物理的な方法で行うこともあります。例えば血液塗抹標本の場合、乾燥法によって固定化します。化学的な固定化や有機溶媒(脱パラフィン処理で使用)によりサンプルや抗原がダメージを受ける場合には凍結法によって固定化します。固定化には次の4つの方法が利用されます。

  • 浸漬法: サンプルを固定液に浸けて固定化する方法
  • 灌流法: 採血して生理食塩水を灌流した後、固定液を灌流することで深部組織を迅速に固定化する方法
  • 凍結法: 低温凍結用包埋剤(OCTコンパウンドなど)に浸してから凍結し液体窒素中で保存する方法
  • 乾燥法: サンプルを風乾してから炎などによりスライド上に加熱固定する方法

固定化により標的抗原がマスクされてしまっては抗体がアクセスできず検出できなくなってしまいます。したがって、抗原検出(染色)が行えるように適切な固定化を行う必要があります。

固定化の条件

特定の固定化条件が、ある抗原エピトープの抗原性保持に適していても、(たとえ同じ抗原であっても)別のエピトープには適さない場合があり、抗原やそのエピトープによって固定化の至適条件はさまざまです。固定液を選択する際には次の条件を検討項目におく必要があります。

  • 固定液の種類(ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドなど)
  • 浸漬や固定化の時間
  • 固定液の濃度
  • pH
  • 温度
  • 固定化後の処理方法

各種固定化試薬について

ホルムアルデヒド

最も広く利用される架橋剤がホルムアルデヒドです。ホルムアルデヒドはタンパク質や核酸のアミノ基(1級アミン、-NH2)と反応して部分的に可逆的なメチレン結合を形成します。通常、ホルムアルデヒドの市販品は、パラホルムアルデヒド(ホルムアルデヒドのポリマー)から調製しますが、酸化してギ酸を生じることや再重合するのを防ぐために安定化剤としてメタノール(10%程度)が添加されています。プロトコルによっては、ホルムアルデヒドを用いた固定液へのメタノールの持ち込みを避けるためにパラホルムアルデヒドから用事調製したフレッシュなホルムアルデヒドの使用が推奨されます。弊社ではメタノールフリーの16% Formaldehydeをご用意しています。

グルタルアルデヒド

アルデヒド基を2つもつグルタルアルデヒドは、アミノ基(-NH2)やスルフヒドリル基(-SH)(および芳香環)と反応するため、ホルムアルデヒドより強力な架橋剤といえますが、組織への浸透が遅く水溶性タンパク質の遊離やサンプル組織の構造変化をもたらすことがあります。グルタルアルデヒドを用いて固定化を行った場合、固定化後にアミノ基を持つ分子で処理して遊離のアルデヒド基をブロックします。この処理をしないと、未反応のアルデヒド基が検出の際に添加した抗体などのアミノ基と反応してしまいます。一般的に、アルデヒド基のブロックにはエタノールアミンやリジンを使用します。

アルコール

エタノール、メタノール、アセトンなどはタンパク質を沈殿させる作用があり、細胞の保存に有用ですが、組織を収縮させる作用があるため、電子顕微鏡の固定には不向きです。

スベルイミノ酸ジメチル

DMS (dimethyl suberimidate)は、タンパク質のαアミノ基(N末端)やεアミノ基(リジン側鎖)と結合するホモバイファンクショナルな架橋剤です。DMSは、架橋タンパク質の構造変化を起こしにくいため抗原の免疫活性を保持しやすく、またアルデヒド基を持たないため架橋反応後のブロック処理が不要という利点があります。

標的抗原と固定液

抗原 固定液
さまざまなタンパク質、ペプチド、低分子量の酵素 4% Paraformaldehyde
4% Paraformaldehyde-1% Glutaraldehyde
10% Neutral-Buffered Formalin (NBF)
軟組織 Bouin固定液
アミノ酸 4% Paraformaldehyde-1% Glutaraldehyde
核酸 Carnoy固定液
高分子量タンパク質(免疫グロブリン) 氷冷アセトン、メタノール (100%)
その他(電子顕微鏡) 4% Paraformaldehyde-1% Glutaraldehyde

 

固定液 組成 コメント
4% Paraformaldehyde in 0.1M Phosphate Buffer  下記を混合

      • NaH2PO4, 3.2g
      • Na2HPO4, 10.9g
      • Distilled water, 1000mL

pHを7.4に調製後下記を添加

    • Paraformaldehyde, 40g
 60℃で撹拌しながら1N NaOHを1-2滴ずつ添加して、パラホルムアルデヒドを溶解し、室温に戻してろ過
 4% Paraformaldehyde-1% Glutaraldehyde in 0.1M Phosphate Buffer  Prepare 4% paraformaldehyde in 0.1M phosphate buffer(上記)にGlutaraldehyde, 20mLを添加
 Bouin固定液  下記を混合

  • Saturated aqueous picric acid, 750mL
  • 40% formaldehyde, 250mL
  • Glacial acetic acid, 50mL
 室温保存
 10% Neutral-Buffered Formalin  下記を混合

      • Na2HPO4, anhydrous, 6.5g
      • NaH2PO4・H20, 4g
      • Distilled water, 900mL

pHを7.4に調製後下記を添加

    • 40% formaldehyde, 100mL
 4℃保存
 Carnoy固定液  下記を混合

    • Ethanol (absolute), 60mL
    • Chloroform, 30mL
    • Acetic acid, glacial, 10mL
 沈殿剤  氷冷アセトン、メタノール (100%)  室温で5 ~ 10分で固定

【無料ダウンロード】タンパク質関連カタログまとめ

タンパク質定量ガイドやタンパク質抽出カタログ、タンパク質ゲル電気泳動テクニカルハンドブックなど、タンパク質研究に関連するカタログ・ハンドブックを一同にまとめました。PDFファイルのダウンロードをご希望の方は、下記ボタンよりお申し込みください。
ダウンロード

この記事に関する、ご意見・ご質問がございましたら、下記フォームからご連絡ください。

お名前 (必須)

メールアドレス (必須)

勤務先・所属先

題名

メッセージ本文

 確認ページはございません。内容をご確認の上チェックを入れてください

トレーニング