硫安、アセトン、TCAなど、タンパク質の沈殿法プロトコールまとめ

硫安、アセトン、TCAなど、タンパク質の沈殿法プロトコールまとめ

はじめに

タンパク質の沈殿はサンプルの濃縮や共存物質(阻害物質)の除去に広く利用されます。今回は、前回「タンパク質の沈殿の種類と原理まとめ」でご紹介した沈殿法のプロトコル例をご紹介します

沈殿法のプロトコル例

硫酸アンモニウム(硫安)沈殿法

ホフマイスター系列のコスモトロピック塩である硫安は溶液中のタンパク質から結合水和水を奪うことでタンパク質の溶解度を減少させて沈殿(塩析)させます。硫安沈殿では、分子量の高いタンパク質ほど低い硫安濃度で沈殿するため、タンパク質の分画にも利用されています。従来から、血清、培養上清、腹水の粗精製に利用されており、アフィニティ精製と組み合わせて抗体の精製にも利用されます

  1. サンプルと等量の飽和硫酸アンモニウム水溶液を用意します。
  2. スターラーで攪拌しながら、できるかぎりゆっくり、飽和硫酸アンモニウム水溶液を全て添加します。
  3. 室温で30分間または4℃でオーバーナイトにて放置し沈殿させます。
  4. 遠心分離(3,000×gで20分間)をおこないます。
  5. 上清を廃棄して少量のバッファーで沈殿物を再溶解します。
  6. Slide-A-Lyzer透析カセットなどを用いて300-500倍量の外液に対して透析を3回おこないます。

アセトン沈殿法

硫酸アンモニウム沈殿法に比べて、タンパク質の変性は大きくなりますが、有機溶媒を用いる沈殿法もあります。有機溶媒を用いる沈殿法もタンパク質に結合している水和水を奪うことでタンパク質の溶解度を低下させて沈殿させることを原理としています。特にアセトン沈殿法は有機溶媒を用いた沈殿法のなかでは比較的おだやかな方法とされています

  1. サンプル量の4倍量のアセトンを用意して、-20℃に冷却します。
  2. サンプルを含むマイクロチューブに4倍量の冷アセトンを添加します。
  3. 激しく攪拌した後に沈殿(-20℃で60分間)させます。
  4. 遠心分離(13,000-15,000×gで10-15分間)します。
  5. 上清を廃棄します。
  6. マイクロチューブのキャップを外して、アセトンを揮発(室温で30分間程度)させます。
  7. 少量のバッファーで再溶解します。(オプション; 夾雑物を完全に除去したい場合などには、操作2-5を繰り返します。)

トリクロロ酢酸(TCA)沈殿法

アセトン沈殿法に比べて、タンパク質の変性は大きくなりますが、回収率が高い方法として、酸を使用する方法があります。タンパク質は等電点付近で溶解度が最小化しますが、タンパク質の多くが酸性pHに等電点をもつことから、一般的に塩酸やTCAなどの酸を用いた変性・沈殿がおこなわれています。TCA法は酸を使用する沈殿法のなかでも、もっとも回収率の高い方法のひとつとされています。

  1. 等量の20% TCAをサンプルに添加して攪拌します。
  2. タンパク質を沈殿(氷上で30分間)させます。
  3. 4℃で遠心分離(13,000-15,000×gで5-10分間)します。
  4. 上清を廃棄します。
  5. 少量の冷アセトンでペレットを洗浄します。
  6. 4℃で遠心分離(13,000-15,000×gで5-10分間)します。
  7. 上清を廃棄してアセトンを揮発させます。
  8. 少量のバッファーで再溶解します。

TCA/アセトン沈殿法

アセトンやTCAを単独で用いた沈殿法に比べて、より強い沈殿効果が得られるとされています。

  1. サンプルの10倍量のTCA/アセトン(10% TCA in Acetone)を-20℃に冷却します。
  2. サンプルに対して10倍量のTCA/アセトンを添加して激しく攪拌します。
  3. タンパク質を沈殿(-20℃で3時間から一晩)させます。
  4. 遠心分離(13,000-15,000×gで5-10分間)します。
  5. 沈殿ペレットに冷アセトンを添加して激しく攪拌します。
  6. 静置(-20℃で10分間)します。
  7. 遠心分離(13,000-15,000×gで5-10分間)の後、上清を廃棄します。
  8. マイクロチューブのキャップを外して、アセトンを揮発させます。(乾燥させすぎないように注意)

クロロホルム/メタノール

SDSやTriton X-100などの界面活性剤、還元剤、塩の除去を目的に質量分析の前処理で利用されます

  1. サンプル量の4倍量のメタノールを添加して激しく攪拌します。
  2. サンプル量と等量のクロロホルムを添加して激しく攪拌します。
  3. サンプル量の3倍量の純水を添加して激しく攪拌します。
  4. 遠心分離(13,000-15,000×gで1分間)で2層に分離します。このとき2層の界面にタンパク質が出現します。
  5. 上層(親水層)を除去します。
  6. サンプル量の4倍量のメタノールを添加して激しく攪拌します。
  7. 遠心分離(13,000-15,000×gで2分間)
  8. 上清を廃棄します。
  9. 不活性ガスの吹き付けやSpeed-Vac減圧濃縮装置などでペレットを乾燥させます。
  10. 適当なバッファーかSDS-PAGEサンプルバッファーで再溶解します。

参考文献

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