【凍結保存の基礎 1】クライオチューブ選びで大切な5つのこと

【凍結保存の基礎 1】クライオチューブ選びで大切な5つのこと

著:Arne Johansson, Senior Scientist, Thermo Fisher Scientific

生物学的試料の凍結保存には、多くのメーカーから販売されているさまざまな種類の凍結保存用チューブ-いわゆるクライオチューブ-が使用されています。凍結保存の目的は、生体試料や細胞を保存後に研究などに使用するため、サンプルの特性変化を最小限に抑えて、長期間、安全に保存することです。凍結保存されるサンプルは貴重なサンプルであることが多いため、保存中にサンプルへのなんらかの影響や損傷を与えることがないクライオチューブを選ぶことが極めて重要です。細胞培養に精通した人からも見落とされがちですが、クライオチューブを選定するときは、フィット感や操作性などの感覚的な特長以外にも、目に見えない製品の品質をよく理解して、長期かつ安全に保存できるチューブを選ぶことが大切です。

このブログでは、クライオチューブを選ぶ時に重視したい5つのポイントをご紹介します。

1.気密性(Tightness)

サンプルの長期保存-特に液体窒素中での保存-に使われるクライオチューブには、液体窒素などのチューブ内部への流入やチューブ外部へのサンプルの液漏れを防止するシーリング材が必要です。保存中に液体窒素がクライオチューブ内に流入すると、融解時にチューブ内の液体窒素が急速に気化して膨張しチューブが破裂する可能性があります。液体窒素は室温に加温されると約700倍に膨張するためです。膨張が妨げられる場合、なんとチューブ内には約700気圧もの圧力がかかります!超低温下では、どのようなシーリング材でも柔軟性を失うため、O-リングなどのガスケットやパッキンを使っているチューブには、理論上常に液漏れのリスクが生じます。液体窒素中で液相保存されているクライオチューブを室温に取り出す際には、チューブを液体窒素凍結容器内の気相に24時間以上保持したあと、容器から取り出すことでチューブの破裂リスクを回避することができます。クライオチューブを気相にしばらく放置することで、キャップの隙間からチューブ内に流入した液体窒素をゆっくりと蒸発させることができるからです。凍結保存時には、超低温でも脱落リスクの少ないO-リング、キャップ内蓋(キャップライナー)や液漏れしない構造をもつクライオチューブを選ぶことが大切です。クライオチューブへの液体窒素の流入を100%防ぐためには、外部保護被覆を使ってチューブを確実に密封することが必要です。Thermo Scientific TM NuncTM クライオアクセサリには、液相保存するクライオチューブを密封するための、ヒートシール可能なポリエチレン製チューブである NuncTMCryoFlexTM(製品番号:343958)をご用意しています。

2.細胞毒性

培養細胞などの生物学的試料を生きたまま、長期にわたり凍結保存するためには、細胞毒性を示さない原料で作られたクライオチューブを使うことが重要です。生きた細胞を超低温で凍結保存するために、プラスチック製のクライオチューブがよく使用されます。しかし、プラスチック原料の品質によっては細胞に対して毒性を示す不純物や添加物を含んでいる可能性があるものも存在するため、プラスチックの材質グレードを精査することは極めて重要です。クライオチューブを選ぶ際には、細胞無毒性が証明されているプラスチックを原料としたチューブを選ぶことが非常に重要です。Thermo Scientific TM Nalgene TMクライオバイアルNuncクライオチューブは以下の試験に合格しており、哺乳動物細胞に対する細胞毒性がないことが証明されています。

  1. Growth inhibition test (Ref.: Materials Science Toxicology Laboratories, University of Tennessee, USA)
  2. Cloning inhibition test (Ref.: Thermo Fisher Scientific, 1985)

3.変異原性(Mutagenicity)

培養細胞をはじめとした生物学的試料を凍結保存する目的の一つとしては、未変異の標準株を維持することがあげられます。そのため、クライオチューブから溶出の可能性がある化学物質によって、生物の遺伝情報(DNAあるいは染色体)に突然変異を誘発させるような変異原性がないとされているチューブを使うことは極めて重要です。保存中に細胞に吸収された化学物質の影響は、凍結保存中に停止している生命現象に長期的な影響をおよぼすため、保存後に多数の細胞分裂を経て初めて異なる形質が発現する可能性があるということに留意しなければなりません。変異原性の影響は、凍結融解後、細胞を複数回継代培養するまで現れないことがあります。あとあと実施した検査によって、使っていた細胞が変異していることが判明すると、実験のやり直しに繋がりかねません。変異原性試験に合格したクライオチューブを選ぶことはとても大切です。Nuncクライオチューブはエームズ試験(化学物質の変異原性を評価するための試験方法)に合格しており、変異原性が認められないことが証明されています。(参照:OECD Salmonella typhimurium, Reverse Mutation Assay No. 471, 1983)

4.発熱性(Pyrogenicity)

クライオチューブは、薬理学試験で使用される活性物質の保存に使われることもあります。発熱性の不純物は、薬理学的活性物質の効果を阻害する可能性があるため、パイロジェンと呼ばれる発熱物質のクライオチューブからの検出は許容されません。代表的な発熱物質のひとつであるエンドトキシンは、クライオチューブに使用されるポリプロピレンに対して特に吸着性が高いことが知られています。そのため、クライオチューブに混入するエンドトキシンには特に注意を払う必要があります。Nuncクライオチューブは、FDAガイドラインに記載されているLimulus Amebocyte Lysate(LAL)試験に合格しており、実質上、エンドトキシンフリーであることが証明されています。さらに、エンドトキシンレベルは米国薬局方(USP:United States Pharmacopeia)に記載されている20 EU /device(0.5 EU /mL)未満であることが文書化されており、パイロジェンフリー(非発熱性)が保証されています。

5.滅菌性(Sterility)

保存期間中サンプルの状態を変化させず、長期にわたり完全性を維持するためには、クライオチューブ外部からの微生物によるコンタミネーションをなくすことが必要です。無菌性保証水準(SAL:Sterility Assurance Level)が証明されているクライオチューブを選ぶことは、凍結保存で使用するチューブの重要な選定基準となります。無菌性保証水準は適切な滅菌工程を経て滅菌処理された製品中に存在する菌の最大生存確率をいい、10-nで表されます。NalgeneクライオバイアルやNuncクライオチューブには、バイオバーデンのモニタリングとそれに続く放射線滅菌が行われており、SAL10-6を達成することで無菌性を保証しています。これは、統計学的に100万本のチューブ当たりの汚染菌の最大生存数は1本以下に相当します。

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