【凍結保存の基礎 5】これでカンペキ!生物試料の回収と調整法

【凍結保存の基礎 5】これでカンペキ!生物試料の回収と調整法

この連載では、凍結保存に関する役立つ情報をお届けします。
普段、何気なく感じていることに対するヒントにもなると思いますので、ぜひお気軽にご覧ください。

微生物

微生物、特に細菌や酵母は、好気的条件下において嫌気的な細胞に比べて冷却や凍結によるダメージに対して抵抗力を示すのみならず、細胞の浸透性が高く冷却時の脱水も速いことが分かっています。対数増殖期後期や定常期初期に回収された細胞は、その前後に回収された細胞よりも凍結に対する優れた抵抗性を示します。一般的に凍結前の細胞数が多いほど回収率も高くなります。多くの細菌や酵母は適切な回収率を得るためには約1×10-7 cells/mLの細胞が必要となります。これらは寒天培地から簡単に回収できますが、もっと大量に必要な場合には液体培地で培養した後、遠心し回収できます。いずれの場合も、通常、細胞は凍結保護剤を含む新鮮な増殖培地に懸濁させる必要があります。

原生生物も同じように遠心濃縮することができますが、多くの場合は培地に懸濁しており、凍結保護剤を含んだ同量の新鮮な増殖培地を添加し希釈します。

胞子を形成するカビは、胞子を回収し、凍結保護剤を含んだ新鮮な増殖培地に胞子を懸濁させる必要があります。カビの胞子を凍結させる場合、凍結前に発芽させないために、迅速に凍結する必要があります。胞子を形成しないカビで強い菌糸を持つ場合、菌糸を含む寒天培地を切り取って回収し、凍結保護剤を含む新鮮な増殖培地に添加します。寒天培地に固着しない強い菌糸は液体培地で増殖させ、凍結前に菌糸の固まりを混ぜ合わせます。

生細胞数と回収率は、培養細胞を凍結させる前後に見極めておかなくてはなりません。生細胞数は培養細胞の増殖と再現性の指標となります。凍結前後の生細胞数の比較は、回収率や凍結保存手順の成功を表す目安となるでしょう。

ウイルス

ほとんどのウイルスは、無細胞状態で調製すると問題なく凍結でき、冷却レートの調節は必要ありません。ただし、増殖能力のある感染した細胞の中で培養する場合は、冷却レートの調節が必要です。ウイルスを卵から回収する場合には、尿膜液や卵黄嚢の豊富なタンパク質がウイルスを凍結保存操作から保護します。植物細胞ウイルスは、感染した植物組織中でも精製したウイルスとしても保存できます。

植物細胞

植物細胞は凍結保存において他の細胞と同じような反応を示します。最適な細胞回収時期は対数増殖期後期です。また、細胞密度も回収率に関係し、最適な密度は保存する細胞の種類によって異なります。複数の凍結保護剤の組み合わせは、単一の場合よりも効果的な場合があります。凍結時の冷却レートも重要であり、多くの場合、液体窒素温度(-150℃)にまで冷却される前に一度、-30~-40℃に一定時間保つ2段階冷却が効果的と言われています。この操作は凍結前の細胞質の脱水を促します。

未分化のカルス組織は連続培養することにより性質が変化してしまうため、その性質を安定化させるために凍結保存することが望ましいと言われています。また植物の生殖質を安定化させる方法として、種子の保存も行なわれます。最も一般的な方法は低温かつ低湿度条件での保存です。しかし、凍結保存時の脱水状態に耐性をもつ種子もあり注意が必要です。また、液体窒素温度での保存も可能です。

哺乳動物細胞

哺乳動物細胞を凍結保存する場合は、凍結する細胞数を調節しなければなりません。多くの哺乳動物細胞の場合、1×10-6~10-7 cells/mLの細胞数から始めることが適しています。細胞懸濁液は、最終保存濃度の2倍の濃度を用意し、同量の凍結保存液(2×凍結保護剤+培地)を加えます。もうひとつの方法として、遠心後の細胞ペレットを凍結保存液(1×凍結保護剤+培地)で必要な細胞濃度の懸濁液にします。細胞の回収と濃縮を慎重に行なうことで、凍結保存のストレスに曝す前に可能な限り細胞を健全な状態に保つことができます。乱暴なピペッティングや高速の遠心も細胞にダメージを与えるので、極力避けてください。

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