【いまさら聞けないがんの基礎 1】がんと慢性炎症の関係とは?

【いまさら聞けないがんの基礎 1】がんと慢性炎症の関係とは?

生理的炎症は、感染および組織損傷に対する身体の初期免疫防御の一つです。急性炎症は、身体が身体自身を治癒しようと働く際に生じ、その後、感染や組織損傷が回復するにつれて消失します。反対に、慢性炎症は有害で、がんを含む多くの重篤な疾患に関係します。*1,2 研究者は炎症が高頻度で腫瘍進行に関係することを確認してきましたが、炎症誘発性の腫瘍形成に寄与する根底にあるメカニズムについては完全には解明されていません。組織への炎症細胞浸潤およびそれらのケミカルメディエーターの局所組織の微小環境におけるDNA、RNA、タンパク質、脂質、および代謝産物の有害な変化への寄与については多くのエビデンスが明らかにされています。*3

がんのホールマークは、腫瘍細胞が示す特徴的で補完的な能力を表し、新生物疾患の複雑さを概念的に説明するフレームワークを提供します(図1.1)。数十年の研究を通して蓄積されたエビデンスは、腫瘍抑制因子遺伝子およびがん遺伝子における変異が最終的にどのように細胞機能の異常に寄与しているかについての情報を提供します。*4,5

本記事は、腫瘍抑制因子遺伝子とがん関連炎症に寄与するがん遺伝子との関係についての情報の概要を提供することと、ウェスタンブロット、免疫蛍光分析、フローサイトメトリー、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、ならびにがん生物学、免疫学、および生物医学研究の他の分野に関連するターゲットの解析に常用される他のツールなどの幅広い実験手法に関する詳細なプロトコルへのアクセスを提供することを目的としています。

がんのホールマーク

慢性炎症およびがん

生理的炎症および病的炎症

生理的炎症は、疾患に対する生体防御に重要な役割を果たし、病原性微生物感染、化学刺激、および他の外傷による組織の損傷に反応して発症します(図1.2)。炎症反応には、トリガーによってさまざまな生理的目的と病理的結果が存在します。3種類の開始トリガーの中で、感染誘導性炎症のみが免疫反応の誘導と関連しています。*6 炎症部位に動員される細胞は、宿主の感染からの防御と連携して働きます。生理的炎症反応の初期の間、炎症組織に存在するマクロファージおよび肥満細胞に迅速に反応して産生する走化性タンパク質によって、最初に好中球が動員されます。*7,8 炎症過程が進行するにつれて、成長因子、サイトカイン、およびケモカインが含まれるシグナル伝達ネットワークによって、さまざまなタイプの免疫特異的な細胞(白血球、リンパ球、および他の炎症細胞)が活性化され、炎症部位に動員されます。炎症の細胞メディエーターの概要を表1.1に示します。*9 完全には網羅していませんが、炎症過程に関与するサイトカインおよび他のタンパク質のリストを図1.3および表1.2に示します。プロスタグランジン、transforming growth factor-β(TGF-β)、活性酸素種(ROS)、窒素中間体、および他のメディエーターなどの炎症誘発性分子および抗炎症性分子の存在は、感染による組織損傷を減少させ、組織修復を促進するように働きます。感染が排除され、創傷治癒が完了すると、生理的炎症反応が消失し、罹患した組織はホメオスタシスを回復します。*10–15

消失しない慢性的な病的炎症は、自己免疫疾患や炎症性疾患、線維症や組織変性、およびがんなどの重篤な医学的症状の発症に関連している可能性があります。慢性的な病的反応は、多くの異なるメカニズム(遺伝的不安定性、異常な細胞応答、および腫瘍微小環境の形成をサポートし、免疫回避に寄与するケミカルメディエーター)によって腫瘍形成を誘導します。炎症や感染に関連する発がん促進過程は、内因性経路のイベントに分類されるのに対し、炎症を促進する発がん性変異に寄与する遺伝子変異は外因性経路に関連するイベントと考えられます(図1.4)。

生理的炎症および病的炎症反応

 

サイトカインシグナル伝達経路

炎症反応の伝播や消退のプロセスには、複数の異なるタイプの細胞が関与しています。さまざまな細胞タイプの主な機能細胞表面マーカーを表1.1に示します。

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炎症の概要

炎細胞の表現型解析を支援する装置

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自動セルカウンター
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Invitrogen™ EVOS™ Imaging Systemは、顕微鏡の複雑さを排除した設計によって、研究者が装置の操作や維持よりもデータにフォーカスすることを可能とします。

  • シンプル:直感的操作により顕微鏡の複雑さを排除
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  • 汎用性:ベーシックな透過光と完全自動蛍光システムを装備

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炎症のメディエーター

損傷細胞や活性化細胞から放出される可溶性タンパク質や化学物質は、炎症過程を制御します。これらの物質およびその受容体の作用を表1.2に示します。

可溶性炎症メディエーター

これらのメディエーターおよびがん研究に重要な他のタンパク質の評価を支援するために、当社では40,000種類を超える高品質な抗体ならびに幅広い抗体関連性品および受託サービスを取りそろえています。当社の抗体アッセイが幅広い抗体アプリケーションにおいて優れた実験結果の達成に寄与していることは、世界中の数千もの文献引用により実証されています。

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外因性経路および内因性経路

外因性経路および内因性経路は、がん関連炎症を引き起こすと考えられています(図1.4)。*8,14 外因性経路に寄与する因子としては、消化管、膵臓、および前立腺などのいくつかの体内組織において発現する感染や自己免疫によって誘導される慢性炎症が挙げられます。同様に、喫煙は気道内に炎症を引き起こすことが知られており、炎症に寄与するもう一つの外因性因子です。外因性因子に関連する炎症状態は、罹患組織のがん発生リスクの上昇と相関します。内因性経路を活性化する因子としては、有害な発がん促進遺伝子変異を導くイベントが挙げられます。例えば、発がん促進性の炎症の発生は、機能獲得型(gain-offunction)の点変異、染色体再編、あるいは増幅などの腫瘍抑制遺伝子の不活性化やさまざまな発がん性変異と関係することが示されています。結果として生じる細胞の悪性形質転換は、先立つ原因となる炎症症状が存在しない場合でも、腫瘍微小環境における炎症誘発性メディエーターを産生する異常な機能的反応を誘導します。*15 2つの経路が合流すると、いくつかのイベントが展開し、炎症の増幅に寄与します。腫瘍細胞における、転写因子 ― 主に、核因子-κβ(NF-κβ)、シグナル伝達兼転写活性化因子3(STAT3)、および 低酸素誘導因子- 1α(HIF1α)― の活性化は、注目すべきことです。続いて、これらの転写制御因子は、サイトカイン、ケモカイン、およびシクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)などの可溶性炎症メディエーターの産生を誘導します。これらは、炎症細胞を腫瘍微小環境に動員する働きを持つプロスタグランジンの産生に必要とされます(表1.2)。浸潤性炎症細胞、特に単球、顆粒球、およびリンパ球は、炎症誘発性サイトカインの産生をさらに誘導し、それによって、炎症症状を増幅させ、腫瘍形成を永続させる正のフィードバックループが形成されます。*8

外因性経路および内因性経路

COX2 Rabbit Polyclonal Antibody

参考文献:
*1. Landskron G, De la Fuente M, Thuwajit P et al. (2014) Chronic inflammationand cytokines in the tumor microenvironment. J Immunol Res 2014:149185.
*2. Tabas I, Glass CK (2013) Anti-inflammatory therapy in chronic disease:challenges and opportunities. Science 339(6116):166–172.
*3. Mangerich A, Knutson CG, Parry NM et al. (2012) Infection-induced colitisin mice causes dynamic and tissue-specific changes in stress response and DNA damage leading to colon cancer. Proc Natl Acad Sci USA 109(27):E1820–9.
*4. Hanahan D, Weinberg RA (2000) The hallmarks of cancer. Cell 100(1):57–70.
*5. Hanahan D, Weinberg RA (2011) Hallmarks of cancer: the next generation.Cell 144(5):646–674.
*6. Medzhitov R (2008) Origin and physiological roles of inflammation. Nature 454(7203):428–435.
*7. Lu H, Ouyang W, Huang C (2006) Inflammation, a key event in cancer development. Mol Cancer Res 4(4):221–233.
*8. Mantovani A, Allavena P, Sica A et al. (2008) Cancer-related inflammation. Nature 454(7203):436–444.
*9. Murphy KP. Janeway’s Immunobiology. 8th ed. New York, NY. Garland Science, Taylor & Francis Group, LLC; 2012.
*10. Merck Manuals. Chemical Mediators of Inflammation. Available: http://www.merckvetmanual.com/mvm/pharmacology/anti-inflammatory_agents/chemical_mediators_of_inflammation.html#v3337363. Accessed March 15,2015.
*11. Khan MM. Chapter 2: Role of Cytokines. Immunopharmacology. DOI:10.1007/978-0-387-77976-8 2,Springer Science+Business Media, LLC 2008.
*12. Liu C, Zhang Y, Zhan J et al. (2014) Interleukin-23A is associated with tumor growth in Helicobacter-pylori–related human gastric cancer. Cancer Cell Int14(1):104.
*13. Lu H, Ouyang W, Huang C (2006) Inflammation, a key event in cancer development. Mol Cancer Res 4(4):221–233.
*14. Lowe J, Shatz M, Resnick MA et al. (2013) Modulation of immune responses by the tumor suppressor p53. Biodiscovery 8:2.
*15. Grivennikov S, Greten F, Karin M (2010) Immunity, Inflammation, and Cancer. Cell 140(6): 883–899.

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