クマムシの乾眠や高機能繊維クモ糸の解析から、生物の本質へ迫る( 慶應義塾大学先端生命科学研究所 荒川和晴氏)-「NEXT」2016年5月号掲載

クマムシの乾眠や高機能繊維クモ糸の解析から、生物の本質へ迫る( 慶應義塾大学先端生命科学研究所 荒川和晴氏)-「NEXT」2016年5月号掲載

2種類の光度計で、ハイスループット解析は着実に

荒川和晴氏( 慶應義塾大学先端生命科学研究所)

荒川和晴氏( 慶應義塾大学先端生命科学研究所)ミドリムシやバクテリア、クマムシなど、様々な生物のオミックス解析(ゲノム、トランスクリプトーム、プロテオーム、メタボローム)から、新しい視点で生物を捉えようとする慶應義塾大学の荒川和晴氏。細胞シミュレーションのための基盤技術開発を推進する「E-Cellプロジェクト」の一員としても、多くの研究成果を挙げてきました。近年、革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)の一環として、クモの糸の構造解析にも取り組んでいます。この糸は軽くて強く、しかも衝撃を吸収する伸長性の高い繊維として衣料だけでなく、車やロケットの材料への活用が期待されています。

生物をきちんと理解したい

コンピューターの中で生物を作ると面白そうだと思い慶應義塾大学へ入学。荒川氏は、得意な情報科学からのアプローチで、ゲノム情報を基に細胞シミュレーションモデルを構築する研究で学位を取ります。しかしそれだけでは、ずっと抱き続けてきた「生物とは何か」という問いに答えられないと感じたと話します。「そこで生物と無生物の境界を見極めるため、長期間の乾燥状態を無生物の様に耐えて(乾眠)、生き続けるクマムシの研究を始めました。研究室で大量飼育できる環境を整え、クマムシの耐性の基盤となる生物学的特徴をオミックス解析から研究しています」と語ります。

クマムシ[クマムシとは?]
緩歩動物門に含まれる、水生の無脊椎動物。極寒や長期の乾燥、大量の放射線、真空でも延命する地球上で最強動物と言われている。(参考記事:「宇宙生物学とクマムシと私」)荒川研究室で飼育しているクマムシを綴る「クマムシ日記」では、動画も公開中(2015年5月8日の日記)。動く姿がとってもキュートです。研究室では、写真のヨコヅナクマムシ以外に、ドゥジャルダンヤマクマムシ、南極昭和基地で見つかったAcutuncus antarcticusの三種類を飼育中。 www.kumamushikansatsu.com (クマムシ日記)

2種類の光度計で、核酸の純度と濃度を正確に把握

「クマムシだけでなく、各メンバーは異なる生物を対象に複数のオミックス解析を進めています。そのためラボの次世代シーケンサは毎週稼働させ、データを取ってコンピューターで解析する日々です。実験から解析まで、ハイスループット解析が行えることが、私たちのラボ室の強み」と荒川氏は語ります。サンプル測定には、2種類の光度計、Thermo Scientific™ NanoDrop™ 超微量分光光度計とInvitrogen™ Qubit™ Fluorometerを使っています。「特に実験の初期段階のDNAやRNAの精製後は、どちらも使いますね。NanoDrop超微量分光光度計で複数の波長における吸光度から純度と濃度を測定し、Qubit Fluorometerでターゲット分子の濃度を測定します。次世代シーケンサのライブラリー調製でも、正確な濃度測定が必要となるので、高感度のQubitFluorometerで定量します」と、少人数で効率よく研究を進めるポイントの1例を説明します。

「真の意味」でゲノムを解読する

「クモの糸の解析では、1,000種類のクモを世界中から採集して糸の遺伝子をRNAから解読中です。RNA抽出から配列アセンブリングまで1週間程度で済みますが、貴重なRNAサンプル測定には、微量で測定できるNanoDrop超微量分光光度計が重宝します」。すでにこの1年間で500種類のクモ糸の遺伝子配列を読み取り、物性との関係を解析中とか。「しかも1頭のクモが使う糸は1種類ではありません。放射状に伸ばす縦糸や、縦糸を円形につなぐ横糸、映画『スパイダーマン』の手から出る糸のように、クモ自身が移動をする際の丈夫な『牽引糸』など、多くのクモは7種類程度の糸を状況に応じて使い分けています」。このように多様なクモの糸の遺伝子は単一の遺伝子から派生してきましたが、ちょっとしたアミノ酸配列の違いで大きく物性が変わるそうです。「そこが非常に興味深い点」と荒川氏。「これまでのゲノム解読は、単に配列を読み取るだけ。いわば『塩基配列の写経』でした。クモの糸の遺伝子解析では、ゲノム情報とその実体である糸タンパク質の物性との関係性を読み解こうとしています。それが『真の意味でのゲノム解読』につながるはず」。幅広い応用が期待されるクモの糸から、遺伝子情報と生物機能の関係を紡ぎだし、生物の根幹に迫る研究が続けられています。

NanoDrop 超微量分光光度計 & Qubit Fluorometer
理想は2台。核酸やタンパク質の定量・定性に便利な光度計

NanoDrop 超微量分光光度計 & Qubit Fluorometerベンチトップ型のサンプル定量装置として、UVベースのThermoScientific™ NanoDrop™超微量分光光度計と蛍光ベースのInvitrogen™ Qubit™ Fluorometerを提供しています。NanoDrop 超微量分光光度計は、わずか数μLの微量なサンプル中の核酸やタンパク質を定量。Qubit Fluorometerは、測定分子を専用の蛍光試薬でラベルし、夾雑物中でも目的分子を特異的に定量します。それぞれの特徴を生かして使い分けることで、実験の正確性と効率化が図れます。

 

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ライフサイエンス情報誌「NEXT」

NEXT2016年5月号当記事はサーモフィッシャーサイエンティフィックが発刊するライフサイエンス情報誌「NEXT」2016年5月号からの抜粋です。
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