イヌ腫瘍の早期診断にむけた、尿中BRAF変異遺伝子の測定法開発(東京大学農学部獣医外科学 佐伯亘平氏)-「NEXT」2016年7月号掲載

イヌ腫瘍の早期診断にむけた、尿中BRAF変異遺伝子の測定法開発(東京大学農学部獣医外科学 佐伯亘平氏)-「NEXT」2016年7月号掲載

微量な腫瘍細胞もデジタルPCR技術で高感度に検出

佐伯亘平氏(東京大学農学部獣医外科学)

佐伯亘平氏(東京大学農学部獣医外科学)イヌの尿路移行上皮がんや前立腺がんでは、約7-9割の割合でBRAF遺伝子の変異が検出されます。特に尿路移行上皮がんは、ヒトとは異なり、進行した状態で発見されることが多く、適切な治療を行っても生存期間は1年程度。転移リスクがある生検を避け、イヌにも負担なく早期診断できる方法が求められています。東京大学農学部獣医外科学の佐伯亘平氏は、イヌの尿にわずかにこぼれ落ちた腫瘍細胞中の特異的な遺伝子変異を高感度で検出するアッセイ系を開発し、早期診断に役立てようとしています。

QuantStudio 3DデジタルPCRシステムで尿中のBRAF遺伝子変異を高感度に検出

「検査試料の尿には、膀胱炎の時と同じくらいに非常に多くの炎症細胞が含まれることがあり、わずかにこぼれ落ちた腫瘍細胞を病理的に診断するには経験を要します(図1)。一方、腫瘍細胞だけに含まれる遺伝子変異を検出しようとしても、シーケンシング法では感度的に厳しく、感度が高めの制限酵素断片長多型(RFLP)法では品質管理が必要なステップが多く、再現性に不安を感じていました。そこでリアルタイムPCR法とデジタルPCR法を試してみることにしました」と佐伯氏は振り返ります。「コントロールサンプルで、この2つの検出法を比較した結果、デジタルPCR法の感度が50倍ほど高く、しかも尿中のBRAF遺伝子の変異を100%の正確性で見事に検出できました(図2)」。

炎症を伴う腫瘍サンプル[図1 炎症を伴う腫瘍サンプル]
炎症を伴うイヌ腫瘍の尿検体のHE染色画像。矢印は、多くの炎症細胞中の典型的な腫瘍細胞を指しています。この検体のデジタルPCR法での検出結果は、変異遺伝子0.17%でした。

 

 

遺伝子変異検出法の感度比較[図2 遺伝子変異検出法の感度比較]
イヌの症例から検出したBRAF変異遺伝子と正常遺伝子を段階希釈し、4種類の方法で遺伝子の変異検出率を比較しました。PCRダイレクトシーケンス法では13,2%、RFLP法では0.52%、リアルタイムPCR法では6.8%、デジタルPCR法では0.14%までの変異を検出できました。

アプリケーションデザインサービスで時間とコストをカット

最初はリアルタイムPCR法による検出法だけを想定していた佐伯氏。「TaqMan法を使うのは初めてだったので、テクニカルサポートに問い合わせたところ、アプリケーションデザインサービスを勧められました。サービスの担当者に実験目的やサンプルの状況や従来法の問題点を説明すると、リアルタイムPCR法とデジタルPCR法による比較検討を提案されたんです」とこのサービスを知ったきっかけを話します。「TanqManプローブとプライマー構築に試行錯誤する時間やコストを考えると、今回はこのサービスで実験が効率化できました」と佐伯氏は語ります。

正確な診断法の開発へ向けて

2016年春、佐伯氏は日本獣医内科学アカデミー(JCVIM)学会において「犬尿路移行上皮癌と前立腺癌におけるdigital PCRによるBRAF遺伝子変異検出法の確立とLiquid biopsyの有用性評価」というタイトルで発表し、研究アワード受賞しました。「この方法と従来の細胞診断を併用すれば、イヌの膀胱移行上皮がんの9割を診断可能になります。今後は、研究室の学生やテクニシャンだけでなく、他の施設にもこの検出法を広げたいですね。デザインサービスで、きめ細やかなプロトコールが提供されているので、誰でも再現性の高いデータが得られると安心しています」。さらに異なるがんの診断法開発や血中DNAによる遺伝子変異の検出など、新たなアッセイ系の開発も進めていきたいと語る佐伯氏。ペットのQOL向上を目指した研究が続きます。

デジタルPCRでレアな遺伝子変異にアプローチ
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ライフサイエンス情報誌「NEXT」

NEXT2016年7月号当記事はサーモフィッシャーサイエンティフィックが発刊するライフサイエンス情報誌「NEXT」2016年7月号からの抜粋です。
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