さらに進化し、汎用化するCRISPR-Cas9システムへ(広島大学大学 分子遺伝学研究室 山本卓氏、佐久間哲史氏)-「NEXT」2016年7月号掲載

さらに進化し、汎用化するCRISPR-Cas9システムへ(広島大学大学 分子遺伝学研究室 山本卓氏、佐久間哲史氏)-「NEXT」2016年7月号掲載

RNP導入にLipofectamine CRISPRMAXを活用

山本卓氏(広島大学大学院理学研究科数理分子生命理学専攻分子遺伝学研究室・教授)
佐久間哲史氏(同・特任講師)

山本卓氏(広島大学大学院理学研究科数理分子生命理学専攻分子遺伝学研究室・教授)ゲノム編集の黎明期から技術開発を牽引し、学会を立ち上げ、国内への浸透に貢献する広島大学の山本卓氏と佐久間哲史氏。使いやすく、さらに応用範囲を広げるCRISPR-Cas9システムの技術開発や今後の発展について伺いました。

細胞導入法で編集効率を上げる

「ZFN、TALENに続いて開発されたCRISPR-Cas9技術により、ゲノム編集はより身近になりました。特にCas9ヌクレアーゼタンパク質を利用することでこのシステムの応用性はさらに広がりそう」と山本氏。gRNA(ガイドRNA)やCas9配列をプラスミドやmRNAで共導入する従来法に比べ、Cas9タンパク質とgRNAをRNP(Ribonucleo-protein)として導入すると、DNA切断までの時間が短く、過剰発現によるオフターゲット切断の危険性が低い上、多くの細胞で編集効率が向上します。「培養細胞へのRNP導入には『Lipofectamine CRISPRMAX』を使っています。エレクトロポレーション法のように専用機器も必要なくランニングコストが抑えられます。また他の導入法では効率が低いHCT116株やHepG2株での効率も上がりました」と佐久間氏もコメントします。「しかもCas9タンパク質を使う系では、事前のgRNAの評価も簡単です。in vitroで、標的配列を含むDNA断片にgRNAとCas9タンパク質を反応させて、切断活性の高いgRNAを選別できるので」と山本氏。「さらに編集後の評価には、プラスミドの場合はInvitrogen™ GeneArt™ Genomic Cleavage Detection Kitを使いますが、Cas9タンパク質を使う系では、編集後の細胞集団からゲノムDNAを抽出し、同じく標的部位を含む領域をPCR増幅させてin vitroで切断反応を行います。配列が変化していれば切断されず、編集が起きた細胞の割合が分かります。実際の効率は、ゲノムの状態や遺伝子座によって異なるので有用です。これからはCas9タンパク質を制限酵素のように使えそう」と続けます。

効率よいノックイン法の普及を目指して

「ゲノム編集を利用したノックアウト技術は、すでに汎用的な手法として広がっています。次はノックイン効率を上げて誰もが使える技術にしたいですね」と山本氏。従来法では500~1000塩基対という長い相同領域を持つドナーベクターを作製して相同組換えを起こす方法と、ゲノム編集の切断箇所にすっぽりとDNA配列を組み込む方法がありました。しかし、前者は修復活性の弱い細胞では効率が低く、後者は組み込む向きが制御できません。そこで開発したのが「PITCh(Precise Integration into Target Chromosome)法」です。「Cas9で、ゲノムDNAとドナーベクターの挿入遺伝子の前後の3カ所を切断し、20塩基対ほどの短い相同配列を手がかりに、マイクロホモロジー媒介末端結合という修復機構で外来遺伝子をノックインします。相同組換えより正確性はいくらか落ちますが、手軽で効率が向上します。これまで効率が低かったカエルやゼブラフィッシュでもノックイン個体がとれますよ」と、佐久間氏は新しい技術開発のメリットを話します。

ゲノム編集研究のこれから

山本氏と佐久間氏が、今後注目するのは医療分野。「疾患は限定されますが、疾患部位の細胞を体外でゲノム編集し、細胞を戻す治療法など期待できそうです」と語ります。また切断活性を喪失させたデッド型Cas9を、転写因子や蛍光タンパク質など好みのタンパク質に融合させることで、ゲノム上の狙った位置に活性分子やモニター分子を運ぶ「船頭」の役割にも期待しています。「クロマチンリモデリング因子を融合させ、DNAを傷つけずにエピゲノム環境だけを変え、遺伝子座特異的に転写を制御する『エピゲノム編集』が進んでいます。がんの専門家と協力し、エピゲノムの異常が原因で起こるがんの治療法開発にも貢献したい」と語ります。様々な分野の専門家とのネットワークを介して、ゲノム編集技術は多様化しつつ浸透していくようです。

ゲノム編集効率を最大化! タンパク質フォーマットでの導入に最適
Lipofectamine CRISPRMAX Cas9 Transfection Reagent

Lipofectamine CRISPRMAX Cas9 Transfection ReagentInvitrogen™ Lipofectamine™ CRISPRMAX™ Cas9 Transfection Reagentは、Cas9 Nucleaseタンパク質とRNAの複合体を高い効率で細胞に導入する試薬です。脂質ベースのトランスフェクション試薬として定評あるLipofectamineシリーズとして開発されました。

Lipofectamine CRISPRMAX Cas9 Transfection Reagentの詳細情報はこちらから

ライフサイエンス情報誌「NEXT」

NEXT2016年7月号当記事はサーモフィッシャーサイエンティフィックが発刊するライフサイエンス情報誌「NEXT」2016年7月号からの抜粋です。
NEXTのバックナンバーはこちら

 

 

 

この記事に関する、ご意見・ご質問がございましたら、下記フォームからご連絡ください。

お名前 (必須)

メールアドレス (必須)

勤務先・所属先

題名

メッセージ本文

 確認ページはございません。内容をご確認の上チェックを入れてください

※送信ボタンを押した後に送信完了画面に切り替わらないことがありますが、送信は完了しておりますのでご安心ください。