細胞製剤の展開にむけて、グローバルな「細胞の規格化」を進める (細胞療法研究開発センター 川真田伸氏、山本貴子氏 )-「NEXT」2016年7月号掲載

細胞製剤の展開にむけて、グローバルな「細胞の規格化」を進める (細胞療法研究開発センター 川真田伸氏、山本貴子氏 )-「NEXT」2016年7月号掲載

Essential 8 培地とTaqMan hPSC ScoreCard Panelで高品質な細胞を担保

川真田伸氏、山本貴子氏 (公益財団法人・先端医療振興財団・細胞療法研究開発センター)

川真田伸氏 (公益財団法人・先端医療振興財団・細胞療法研究開発センター)再生医療への期待と共に、着々と細胞製剤の開発が進んでいます。その一方で「細胞製剤の浸透には、研究だけでなくグローバルな展開を想定したビジネスとしての戦略も必要」と語るのは、細胞療法研究開発センターの川真田伸センター長。細胞製剤の品質を担保しながら、低コストで製造するため、自動化や評価システムを開発しています。

膨大なデータと製造工程を管理する「細胞の規格化」で細胞製剤の開発を進める

同センターでは、医師や企業からの細胞製剤の治験薬製造受託や前臨床試験の委託業務の他、細胞治療に関する幅広い共同研究を展開しています。理化学研究所の高橋政代プロジェクトリーダーが手がける、iPS細胞由来の網膜色素上皮の造腫瘍性試験を実施した実績もあります。今後細胞製剤を一般化していくためには、「グローバルな細胞の規格化」が必要だと話す川真田氏。

人手を借りない自動培養システムの導入を目指しています。しかし、川真田氏が想定するのは手動の操作を自動化する産業用ロボットのような開発ではありません。「これまで細胞製剤の品質の担保は、最終製品の検査Quality by Testing(QbT)でしたが、細胞のロスやコストが膨らむのがネックでした。今後必要になってくるのは製造工程を規格化して管理する、つまり製造工程をdesignすることで品質を担保するQuality by Design(QbD)の導入です。これにより細胞を破壊することなく、一定の品質を維持しつつ安定生産が可能になります」。

QbD導入には、製造工程を自動化していくための品質に関係する膨大なパラメーターの取得(Process Analytical Testing:PAT)が不可欠、と語る川真田氏。「各プロセスで得られるPATデータを活用して、QbDをはじめ、容認できる変化や品質のばらつきを考慮した規格値(Design Space:DS)を設定します。これによりPATのデータを元に、常にQbDやDSが更新可能となるので、最新の科学の進歩に適応しながら、安全かつ現実的な価格での細胞製造が可能になる」と続けます。

増殖性の高い培養や客観的な細胞評価で細胞リモートセンシングへの道を切り拓く

山本貴子氏 (公益財団法人・先端医療振興財団・細胞療法研究開発センター)現在、同センターでは、センサー類を装着したES細胞やiPS細胞といった多能性幹細胞の自動化培養システムの開発を目指しています。そのために、高精細で高感度に撮影できるCMOS センサーを用いて細胞の形状を解析するほか、高速液体クロマトグラフ質量分析計(LC/MS)で細胞の培地からメタボロームや代謝系の解析などを行い、PATデータの収集を始めています。

この工程において、Gibco™ Essential 8™ 培地やAppliedBiosystems™ Taqman™ hPSC ScoreCard Panelは規格化に欠かせない製品だといいます。「Essential 8 培地は多能性幹細胞の培養に必要な8つの成分のみで構成されており、BSAなど異種動物由来の成分を含まないので、ロット間のばらつきも少なく規格化に非常に有用です。さらに細胞外基質にはN末欠失ヒト組み替えビトロネクチン(Gibco™ VTN-N)を使用することで、未分化能を維持しつつ増殖性の高い培養が可能」と、細胞培養を担当する山本貴子氏は話します。

「増殖性が高い培養ができれば、ビトロネクチンをスポット状にコートしてシングルセル培養が行え、細胞が増えてもコロニー同士の融合を防げ、均一な細胞を維持できます」と川真田氏と山本氏。各スポットの細胞の形状をCMOS センサーで撮影し、PATの一項目にする計画もあります。この成果は昨年、学術誌PlosOneで報告しました。さらに多能性幹細胞の品質評価には、未分化性や三胚葉のマーカーとなる93遺伝子を一度に解析できるTaqMan hPSC ScoreCard Panelを活用しています。「汎用的なリアルタイムPCRシステムで使えるアッセイ系であり、しかも時間経過や条件変化による細胞への影響を客観的にスコアリングできるため、品質管理には欠かせません」と話します。

「高品質かつ低価格で細胞製剤の開発を進めるには、グローバルで戦える自動化システムとPATの活用が鍵」と川真田氏。目線の先には、誰もが再生医療サービスを受けられる未来があります。

細胞製剤における規格化の進展について

2018年3月、お二人に進展を伺いました。「2年前に導入した培養系およびTaqMan hPSC ScoreCard Panelによる多能性と胚葉分化の評価系は、細胞製剤における規格化には欠かせない基盤ツールとして引き続き活用しています。」と川真田氏と山本氏。さらに川真田氏らは、2018年1月、未分化状態のヒトiPS細胞やES細胞においてCHD7遺伝子の発現が高ければ正常な分化能を有することを報告しました※。「再生医療に適した多能性幹細胞を見極めるために、CHD7遺伝子の発現状態も規格化に役立つ可能性が高く、さらに検証を重ねています。また培地中に放出された細胞代謝物を質量分析計等で解析することで、細胞を破壊せずにその状態を評価する系も実用化に近づいています。細胞は培養状態に応じて刻々と変化するので、培養系を的確にデザインし、評価する必要があります。ですから細胞製剤の品質管理には最終産物の細胞だけなく、培養中の細胞を評価する『ダイナミックQC』と言う観点が非常に重要です。再生医療の中核をなすES細胞やiPS細胞を目的に応じて規格化することで、細胞製剤を安価に安定して供給できるはず」と実現に近づく再生医療汎用化への道のりを語ります。
※Differentiation potential of Pluripotent Stem Cells correlates to the level of CHD7. Sci Rep. 2018 Jan 10;8(1):241.

週末の培地交換が不要! iPS/ES培養専用培地
Essential 8 Flex 培地

Gibco™ Essential 8™ Flex 培地は、質の高いiPS/ES細胞の専用培地です。熱感受性の成分を安定化させることで、週末の培地交換が不要になりました。

  • 培養に最小限必要な8成分のみで構成
  • ロット間変動リスクを低減( 安定性に影響を与えるBSAを除去(不含) ・ 成分が明らかなケミカルデファインド組成)
  • ゼノフリー、フィーダーフリー培養に最適

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ヒトES/iPS細胞の多能性&分化度をスコアリング
TaqMan hPSC Scorecard Panel

Applied Biosystems™ TaqMan™ hPSC Scorecard™ Panelは、ヒトES/iPS細胞の多能性や三胚葉分化に関わる93遺伝子の発現解析を一度に調べ、その性質を客観的に評価します。Applied Biosystemsの各種リアルタイムPCRシステムでお使いいただけます。この製品は、ハーバード大学のAlex Meissner博士が、2011年にCell誌に発表した論文を基に共同開発しました。

  • 一回の実験で、細胞を特徴づける93遺伝子の発現を解析(9種類の多能性遺伝子、74種類の各胚葉遺伝子、10種類のハウスキープイング遺伝子を含む)
  • 専用のソフトウェアを使って参照配列と比較し、その結果をスコアリング

TaqMan hPSC Scorecard Panelの詳細情報はこちらから

ライフサイエンス情報誌「NEXT」

NEXT2016年7月号当記事はサーモフィッシャーサイエンティフィックが発刊するライフサイエンス情報誌「NEXT」2016年7月号からの抜粋です。
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