疫学研究から分子レベルの病態解明へ(山形大学医学部 加藤丈夫氏、佐藤秀則氏)-「NEXT」2017年5月号掲載

疫学研究から分子レベルの病態解明へ(山形大学医学部 加藤丈夫氏、佐藤秀則氏)-「NEXT」2017年5月号掲載

デジタルPCRを活用し、疾患リスク遺伝子のコピー数多型解析を簡便化

加藤丈夫 氏 (山形大学医学部内科学第三講座教授 ※2017年4月より、山形大学名誉教授)
佐藤秀則 氏 (山形大学医学部メディカルサイエンス推進研究所)

加藤丈夫 氏 (山形大学医学部内科学第三講座教授)「高齢者に多い特発性正常圧水頭症(iNPH)は、歩行障害や認知機能の低下などが特徴的な認知症疾患で、適切に診断すれば有効な治療法があり、臨床上見逃せません」と山形大学医学部教授の加藤丈夫氏は語ります。加藤氏らの研究グループは、2000年から約4年間におよぶ高齢者の住民健診で、被験者790名に脳MRI検査を実施し、画像診断上iNPHの特徴があるにもかかわらず臨床症状のない状態(AVIM)が存在すること、さらに追跡調査からAVIMはiNPHの前臨床状態と考えられることを報告しました。さらに加藤氏はメディカルサイエンス推進研究所の佐藤秀則氏らとともに、このほどiNPHのリスク因子として、SFMBT1(Scm-like with four MBTdomains protein 1)遺伝子のコピー数多型(CNV)を発見し、病態の分子メカニズム解明の端緒を開きました。

リスク遺伝子の発見

加藤氏がiNPHを研究するきっかけは、その患者数が一般に考えられているよりも多いと感じていたこと、症状を解消し劇的に生活を改善できる治療法(シャント術)があるにもかかわらず、その認知度が低いことだったと言います。2010年、加藤氏らは遺伝子解析の同意を得たAVIMおよびiNPHと考えられる8例の末梢血から抽出したゲノムDNAをもちいてゲノムワイドにCNVアレイで解析し、その結果110例の健常者に比べてSFMBT1イントロン2の12kbにわたる部分的なコピー数の減少が高頻度に認められることを報告しました。「そこで、このCNVがリスク因子かどうかを明らかにするために、今回、確定診断済みのiNPH患者50例と健常高齢者191例で、より定量的なCNV解析を行いました」と話します。解析を担当した佐藤氏は、「iNPH患者の26.0%でSFMBT1イントロン2のCNVを確認し、コントロール群の4.2%と比較して有意に高く(p=1.8×10-5)、オッズ比は7.94でした。これによりこのCNVがリスク因子であることを確認しました※」と続けます。SFMBT1はショウジョウバエScmと相同性が高く、脳内で脈絡叢上皮細胞、脳室上皮細胞と血管内皮細胞などに発現していますが、その機能は不明です。

※‘A Segmental Copy Number Loss of the SFMBT1 Gene Isa Genetic Risk for Shunt-Responsive,Idiopathic Normal Pressure Hydrocephalus (iNPH) ’Sato.H. et.al PLoS One. 2016 Nov 18;11(11)

基礎と臨床をつなぐ先端技術

佐藤秀則 氏 (山形大学医学部メディカルサイエンス推進研究所)「CNV 解析には、AppliedBiosystems™ 7900リアルタイムPCR システムによる相対定量(Δ Δ Ct法による)とAppliedBiosystems™ QuantStudio™ 3DデジタルPCRシステムによる絶対定量で確実に行いました。TaqManアッセイは、デザイン済みのApplied Biosystems™ TaqManCopy Number Assayから選択し、ターゲット領域はSFMBT1のイントロン2のアッセイ(ID:03488384_cn)を、リファレンスにはSFMBT1でコピー数不変のイントロン3のアッセイ(ID:306629891_cn)を使って比較しました」と佐藤氏は続けます。「今回、CNV解析にデジタルPCRシステムが非常に向いていると思いました。存在するかしないかのデータを絶対定量で明確に出してくれること、そして精度の面で特に優れていると思いました。リアルタイムPCR法では、複数回の同一サンプル測定による解析の検証が必要で、測定や解析に習熟が必要です。その点、デジタルPCR法は、プロトコルが簡単で結果が安定しているので、経験が浅いスタッフでも安心して使えます」。さらに佐藤氏は、ゲノム医療の推進にも取り組み、感染症や神経疾患、遺伝病の解析などに、次世代シーケンサーのIonProton™ システムによるクリニカルシーケンシングを行っています。「山形大学ではコホート研究の下地が整っており、そのような山形大学ならではの特徴を生かしつつ、基礎と臨床の研究者でタッグを組んで成果を出していきたい」と話します。

疫学研究から予防医療へ

「高齢者の脳MRIによる4つの疫学調査(総計2064人)の結果を総合すると、iNPHの有病率は1.6%という高率になります。将来的には、今回のリスク因子をiNPHのスクリーニングマーカーとして高齢者検診で調べ、検出された方に脳MRIを受けてもらうようにすれば、最初からすべての方にMRI検査を行う必要がありません。iNPHは、パーキンソン病と症状が似ていていますが、有効な治療法があります。リスクのある方を簡便に見つけ出す技術は非常に有用です。今後も基礎研究者と連携しつつ、疾患予防や創薬を目指した分子レベルの病態解明に取り組みたい」と加藤氏は語ります。

デジタルPCRでコピー数多型(CNV)解析を
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NEXT2017年5月号当記事はサーモフィッシャーサイエンティフィックが発刊するライフサイエンス情報誌「NEXT」2017年5月号からの抜粋です。
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