国際マウス表現型解析コンソーシアムが進める効率的なノックアウトマウスの作製(理化学研究所バイオリソースセンター 綾部信哉氏)-「NEXT」2017年7月号掲載

国際マウス表現型解析コンソーシアムが進める効率的なノックアウトマウスの作製(理化学研究所バイオリソースセンター 綾部信哉氏)-「NEXT」2017年7月号掲載

CRISPR/Cas9システムがプロジェクトを加速

綾部信哉 氏( 理化学研究所バイオリソースセンター実験動物開発室研究員)かつては1系統を樹立するのも一苦労だったノックアウトマウス。今、20,000種を超えるマウスの全遺伝子に対するノックアウトマウスを作製するという、壮大なプロジェクトが進んでいます。13の国や地域の18施設が参加する国際マウス表現型解析コンソーシアム(IMPC)は、2011年に発足しました。2021年の完了を目指すこの世界的プロジェクトはゲノム編集のゲームチェンジャー、CRISPR/Cas9システムの登場でどう変わったのでしょうか。IMPC国内拠点、理研バイオリソースセンター実験動物開発室でマウス作製を担う綾部信哉氏に、プロジェクトの展望と、Invitrogen™ GeneArt™ Platinum™Cas9 Nucleaseの活用事例を伺いました。

Cas9ヌクレアーゼの主流はmRNAからタンパク質へ

CRISPR/Cas9システムは登場以来、簡便で効率的なゲノム編集ツールとして爆発的に普及しました。IMPCもこのシステムを早期から導入し、2013年末にはノックアウトマウス作製に使うことで足並みを揃えます。「IMPCでは、当初からCas9ヌクレアーゼをmRNAで導入していました。DNAに比べてランダムインテグレーションのリスクが少なく、mRNAは分解が速い点が重要です。なぜなら受精卵でゲノム編集を行う場合、2細胞期、4細胞期になってもCas9ヌクレアーゼが効き続けるのは好ましくありません。モザイク個体が生じるためです」。現在、主にエレクトロポレーションによりCas9ヌクレアーゼをタンパク質で受精卵に導入する綾部氏ですが、きっかけは国内発の報告だったと話します。

動物作製に適する、毒性の低いCas9ヌクレアーゼタンパク質

「2015年、Cas9ヌクレアーゼをタンパク質で導入し、効率よく受精卵のゲノム編集ができるとの報告がありました。これはmRNAで使うよりもさらに好都合です。ゲノム切断の時間がさらに短縮されるからです」。このときいち早く上市されたのがGeneArt Platinum Cas9 Nucleaseでした。「スピードと正確性が重要なIMPCのマウス作製では、ゲノム編集効率の高いCas9ヌクレアーゼタンパク質は強力なツールとなります。GeneArt PlatinumCas9 NucleaseはIMPC内でも評判がよく、私も実際に使ってみるとその切断活性を信頼できることが分かり、ツールとして使っていくことにしました。切断活性が高いので、2か所のintronを同時に切断するexon deletionで確実にノックアウトマウスを作製できます。またmRNAに比べてモザイク個体が少ない感触もあります」。

綾部氏はノックアウトマウスに限らず、需要の高い長鎖ノックインの技術開発も手掛けています。「P2A-CreERT2のように大きなDNA配列もノックインできるようになってきました。レポーターマウスと組み合わせれば、遺伝子解析の幅が広がるはず」と話します。最後に効率的なマウス作製のポイントについて伺いました。「受精卵は非常にデリケートなため、ゲノム編集の際に細胞内へ持ち込まれる試薬毒性に敏感です。Cas9ヌクレアーゼタンパク質の最終濃度は100-200 ng/μLで使っていますが、GeneArt Platinum Cas9 Nuclease は3 μg/μLで提供されるのでグリセロールの持ち込みを極力抑えることができ、安心です。我々の何倍もの濃度で使っている報告も見かけますが、それほど使わなくても活性が十分に高く、受精卵にも経済的にも優しい製品だと思います」。発足から6年目の今、折り返し地点にいるIMPC。新たなゲノム編集ツールを手に入れ、マウスの全遺伝子機能解析に向けた国際協調は勢いを増しています。

最大のゲノム編集効率、最小限のオフターゲット切断を実現!
GeneArt Platinum Cas9 Nuclease(核移行シグナル付き)

GeneArt Platinum Cas9 Nuclease

GeneArt Platinum Cas9 Nucleaseは、核移行シグナル付きの野生型Cas9タンパク質であり、CRISPR-Cas9システムで使用するゲノム編集ツールです。

ガイドRNA(gRNA)と安定したリボタンパク質(RNP)複合体を形成させて細胞へ導入し、DNAフォーマットやmRNAシステムよりもはるかに高い編集効率を実現します。細胞から急速に除去されるため、オフターゲット切断を最小限に抑えます。価格改定で、お求めやすくなりました。

GeneArt Platinum Cas9 Nucleaseの詳細情報はこちらから

ライフサイエンス情報誌「NEXT」

NEXT2017年7月号当記事はサーモフィッシャーサイエンティフィックが発刊するライフサイエンス情報誌「NEXT」2017年7月号からの抜粋です。
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