がんのheterogeneityとドライバー変異の逆相関から新たなバイオマーカーの手掛かりを探る(近畿大学医学部 坂井和子氏、西尾和人氏)-「NEXT」2017年12月号掲載

がんのheterogeneityとドライバー変異の逆相関から新たなバイオマーカーの手掛かりを探る(近畿大学医学部 坂井和子氏、西尾和人氏)-「NEXT」2017年12月号掲載

FFPEサンプルから卵巣がんのコピー数変異を簡便に定量

坂井和子 氏(近畿大学医学部講師) 
西尾和人 氏(近畿大学医学部教授)

坂井和子 氏(近畿大学医学部講師) 腫瘍の中にはゲノム構造が異なる、複数のクローンが存在します。高度な腫瘍内不均一性(heterogeneity)は卵巣がんにもあり、がん薬物療法抵抗性の一因と考えられています。しかし固形がんのホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)サンプル中のDNAは、固定処理や長期の保管を経て断片化されており、解析は困難でした。近畿大学医学部の坂井和子氏と西尾和人氏は、今年7月にFFPEサンプルからがんのheterogeneityを定量する新たな方法を論文で報告しました※。論文のタイトル、「ドライバー変異の多い卵巣がんではがんを構成するクローン数が少ない」とはどういうことなのでしょうか。
※’Clonal composition of human ovarian cancer based on copy number analysis reveals a reciprocal relation with oncogenic mutation status’ K. Sakai et.al Cancer Letters 405(2017)22-28

FFPEサンプルのコピー数変異検出が可能に

「NGSは遺伝子変異解析の強力な手法ですが、それだけではコピー数異常の厳密な測定は難しく、しかもheterogeneityを評価するには正常組織とがん組織を目視で分別し、がん組織のみをマイクロダイセクションするなどして、解析する必要があります。多検体を処理するには時間や労力がかり、コストも高い」と坂井氏。また、2011年からコピー数多型(CNV)に着目してきた西尾氏は「これまでもアレイベースのCNV解析はありましたが、FFPEサンプルを使ったゲノムワイドなコピー数定量解析は困難でした。検体はFFPEサンプルの場合が多く、断片化されたゲノムを解析できる方法が必要」と指摘します。

腫瘍内heterogeneityを定量するアイデア

OncoScan CNV Assay KitのMIP(Molecular Inversion Probe)テクノロジーはFFPEサンプル由来の断片化したDNAに最適化されており、ゲノムワイドに配置された220,000を超えるSNPを捉えることでコピー数を解析できます。コピー数増減をlog2 ratio(Log2R)、ヘテロ性をBアレル頻度(BAF; homo=1.0, hetero=0.5)で表しますが、両氏は卵巣がん組織で特徴的なBAFを示すコピー数減少領域に着目しました。西尾氏は「このパターンからheterogeneityを定量できるかもしれない」と着想のきっかけを話します。「この特徴的パターンは複数の腫瘍内クローンから由来するLOHやアレル欠失の混在を示唆すると考えられます。そこでLog2RとBAFのセグメント解析から腫瘍内クローン構成数の推計値である「クローナルコンポジション(CC)」を計算し評価しました。そしてCCは卵巣がんで腫瘍内heterogeneityの指標となることを確かめ、次に体細胞変異と比較することにしました」。

全く新しいバイオマーカー候補

両氏は23の卵巣がんFFPEサンプルで、約50種のがん関連遺伝子変異とCCの関連を調べました。坂井氏は「ドライバー変異の有無で分けると、ドライバー変異の少ないもので有意にCCが高い、つまりheterogeneityが高いことが推察されました。ゲノムが不安定となり多様な『顔つき』を持つようになったがんは、分子標的薬ではなく化学療法や免疫療法が有効かもしれない」とバイオマーカーとしての可能性を語ります。西尾氏は「現在、体細胞変異の頻度や数が免疫チェックポイント阻害薬の効果予測に重要という『tumor mutation burden 仮説』が提唱されています。今回の論文で定義したCCとmutation burdenの相関は不明ですが、今後、共同研究などでその関係を確認していきたい。OncoScan CNV Assay KitはFFPEサンプルからゲノムワイドなクローン数測定を一回で実施できるので多検体解析に対応可能であり、大規模な臨床研究からCCやheterogeneityが治療効果予測に有用かどうかを明らかにしたいですね。CC解析用ソフトウェアは、サーモフィッシャーサイエンティフィックから提供されるので、各種のがんの解析が進むことを期待しています」と締めくくりました。

FFPEサンプル中の固形腫瘍の全ゲノムコピー数異常を解析
OncoScan CNV Kit

OncoScan CNV KitApplied Biosystems™ OncoScan™ CNV Kit は、FFPEに由来するわずか80ng DNAから、48時間以内にデータを生成。
全ゲノムコピー数とLOHの検出を1回のアッセイで解析するマイクロアレイです。
OncoScan CNV Kit の詳細情報はこちらから

ライフサイエンス情報誌「NEXT」

「NEXT」2017年10月号
当記事はサーモフィッシャーサイエンティフィックが発刊するライフサイエンス情報誌「NEXT」2017年12月号からの抜粋です。
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