生命分子間の相互作用解析から生命システムの理解と疾患治療への応用を目指す(東京大学医科学研究所 津本浩平氏、長門石曉氏)-「NEXT」2018年3月号掲載

生命分子間の相互作用解析から生命システムの理解と疾患治療への応用を目指す(東京大学医科学研究所 津本浩平氏、長門石曉氏)-「NEXT」2018年3月号掲載

Expi Expression Systemで相互作用解析に必要な抗体作製をルーチンに

津本浩平氏(東京大学工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻/東京大学医科学研究所 教授)
長門石曉氏(東京大学医科学研究所 先進的バイオ医薬品学社会連携研究部門特任准教授)

津本浩平氏(東京大学工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻/東京大学医科学研究所 教授)「哺乳類細胞を使ったタンパク質発現システ ムの製品化は、研究効率を革命的に向上させました」と語る東京大学の津本浩平氏。津本氏の研究室では、タンパク質を中心に生命分子間の多点結合の相互作用解析を行い、抗体エンジニアリングや低分子スクリーニングを通じて、創薬基盤の構築や新規機能分子などの材料開発、そして生命システムの理解を目指しています。5年前からGibco™ Expi293™ Expression Systemを使い始め、主に抗体作製に活用しています。研究を担当する長門石曉氏は、「IgG1抗体のように100 kDaを超えるタンパク質や、ループ構造が多いものは大腸菌の発現系では難しかったのですが、哺乳類細胞を使うことで正しくfoldingされた状態で大量に回収できるようになりまた」と話します。

タンパク質の生産性を心配せずに使えるExpiシリーズ

津本氏の研究室では、タンパク質の物性やタンパク質間の相互作用について、タンパク質の抗原性や機能の解析だけでなく、熱安定性や凝集性、さらには糖鎖修飾の評価など、多角的に解析しています。また、既存の抗体薬の一部を改変し、より優れた抗原性をもつタンパク質の開発にも取り組んでいます。そのため、日々の解析において抗体は欠かせません。長門石氏は、「数年前までは、研究段階で使う抗体は主に大腸菌で発現できるものに限られたり、翻訳後修飾の研究も基本的には昆虫細胞で行ったりするしかありませんでした。しかしExpiシリーズが登場してからタンパク質作製がルーチン作業で行えるようになり、効率が格段と向上したことで、研究の幅がぐっと広がりました」と話します。Expiシリーズは、細胞、培養液、試薬などがセットになっているトータルシステムのため、学生やテクニシャンでも扱いやすいだけでなく、安定した高収量も評価できるとのこと。「私たちの研究室では、生産したタンパク質を評価することが主な仕事です。タンパク質の生産性を心配せずに使えるExpiシリーズは非常に有用です」(津本氏)。

293細胞とCHO細胞の発現系で比較

現在の医薬品抗体の生産では、ハムスターのCHO細胞の使用が標準的です。「これまで改変抗体を含めて、約10種類の抗体についてGibco™ ExpiCHO™ Expression Systemを使った発現系を使用しました。30 mLの培養系で数 mgから十 mg程度の抗体を回収できています」(長門石氏)。長門石氏は、「ヒトとげっ歯類のハムスターでは翻訳後修飾が異なる可能性があり、両方の発現系で得られたタンパク質を比較することも大切です」と話します。津本氏は、「産学共同研究等では、最初にExpi293細胞で抗体を作り、CHO細胞と比較することがあります。抗体の機能には翻訳後修飾も密接に関わっており、生物種、細胞株、そして培養条件などの検討が改めてキーワードになっています」と話します。

ゲノム創薬の一つの出口として

修士課程から抗体の解析研究に従事してきた津本氏は、「学生時代には、抗体がこれほど医薬品として活用される時代が来るとは思ってもいませんでした。これからは、蓄積してきたデータや経験、知識を基に、優れた特性を有するタンパク質や抗体を提案していきたい」と話し、「物性評価と機能の相関を創薬基盤として活用する時代はすでに到来しつつある」と分析します。そして「機能解析を行って医薬品を開発する時代から、とりあえずゲノムからわかったタンパク質に対する抗体を作れば、それ自体が医薬品となる可能性、もしくはその抗体を活用することで得られる何かが医薬品になる可能性があります。この流れをさらに先へ先へと探っていけば、どこかで医薬品としての出口が見つかるはず。『ゲノム創薬の具体的な出口の一つが抗体』という認識が、今、私たちの中で急速に拡がっています」と話を結びます。

大量発現を可能にした哺乳類細胞の一過性発現システム
Gibco Expiシリーズ (3製品)

Expi Expression Systems

ライフサイエンス情報誌「NEXT」

「NEXT」2018年3月号
当記事はサーモフィッシャーサイエンティフィックが発刊するライフサイエンス情報誌「NEXT」2018年3月号からの抜粋です。
NEXTのバックナンバーはこちら

 

 

 

この記事に関する、ご意見・ご質問がございましたら、下記フォームからご連絡ください。

お名前 (必須)

メールアドレス (必須)

勤務先・所属先

題名

メッセージ本文

 確認ページはございません。内容をご確認の上チェックを入れてください

※送信ボタンを押した後に送信完了画面に切り替わらないことがありますが、送信は完了しておりますのでご安心ください。