神経発達障害発症の分子機構をニューロン・グリア連関から探る(東京大学薬学系研究科 小山隆太氏)-「NEXT」2018年3月号掲載

神経発達障害発症の分子機構をニューロン・グリア連関から探る(東京大学薬学系研究科 小山隆太氏)-「NEXT」2018年3月号掲載

グリア細胞の細かな突起をAlexa Fluor Plus Secondary Antibody で捉える

小山隆太 氏(東京大学大学院薬学系研究科薬品作用学教室准教授)

小山隆太 氏(東京大学大学院薬学系研究科薬品作用学教室准教授)脳が正常に機能するには、神経回路が精密に配線される必要があります。神経回路の興奮と抑制のバランスが崩れると、てんかんや自閉スペクトラム症を始めとする神経発達障害が起き、その一因はシナプスの形成不全による神経回路の構造異変だと考えられています。近年、シナプス形成にグリア細胞が積極的に関与することが示されつつあり、その詳細なメカニズム解明が待たれています。東京大学大学院薬学系研究科の小山隆太氏は、ニューロン・グリアの相互作用を独自の手法で見極め、疾患を分子レベで理解すると共に、創薬への貢献を目指しています。

てんかん脳でニューロン・グリアの相互作用を理解する

てんかん発作はニューロンの同期した過剰発火で引き起こされます。2012年、小山氏らはこの現象が異所性神経回路によって誘導されること、さらにこの異常な回路が乳幼児期の複雑型熱性けいれんによって形成されることを、ラットを用いた実験で突き止めました。同時にてんかんの発症を防ぐ新たな薬剤も見いだし、併せて報告しました。「てんかん脳では興奮性シナプスの異所的な付加や抑制性シナプスの欠落が生じ、神経回路の興奮/抑制バランスが崩壊します。私たちが注目するグリア細胞は、シナプス間隙での神経伝達物質やイオン濃度の調整だけでなく、シナプスの貪食など、神経回路機能に直接的および間接的に影響していることが分かってきました。てんかんのモデル動物を使い、健常脳および病態脳におけるニューロン・グリアの相互作用を包括的に捉えることは、脳における神経回路形成のメカニズム解明にもつながります。そのためには、ニューロンとグリア細胞、特にシナプスへのグリア細胞の関わりを明らかにする必要があります」と小山氏は語ります。

脳切片でグリア細胞の真の姿を捉える

「この研究では、グリア細胞だけで赤色蛍光タンパク質を発現するトランスジェニックマウスの脳切片を共焦点レーザー顕微鏡で観察する実験等を行っています。しかし赤色系の蛍光は弱いため、多くの場合、蛍光タンパク質に対する抗体を使ってシグナルを増強するとともにレーザー出力を上げて観察していました。そうしないとグリア細胞の細かく枝分かれした多くの突起の形状を捉えられなかったからです。ところが一年程前、二次抗体としてInvitrogen™ Alexa™ Fluor Plusを使ったところ、レーザー出力を上げずにグリア細胞の形状を突起の先まで明確に観察できました。培養細胞と違って、組織切片はバックグラウンドが高く、レーザー出力を上げると点状の非特異的なシグナルが出てしまいます。レーザー出力を抑えたままで観察できれば、バックグラウンドを排除でき、ニューロンとグリアの相互作用を細かく観察できますね」と小山氏は続けます。

マウス皮質グリア共培養(32DIV)の染色画像[マウス皮質グリア共培養(32DIV)の染色画像]
アストロサイトを抗GFAP一次抗体(ウサギ)と反応後、二次抗体として通常の抗ウサギIgG- Alexa Fluor 594(左)、もしくは-Alexa Fluor Plus 555(右)で染色(赤)し、核をDAPIで染色(青)。従来品よりもAlexa Fluor Plus二次抗体でより強い蛍光を観察しました。

純粋なサイエンスの成果を創薬に活かす

「てんかんだけでなく自閉症の発症にも神経回路の異常が関与すると考えられています。自閉症では本来、発生や発達段階で消去されるべき余分なシナプスが残存することが発症につながり、この過程にもグリア細胞の関与が示唆されています。ですからニューロン・グリア連関の研究は、てんかんだけでなく、他の神経疾患にも共通する分子メカニズムの解明につながる可能性があり、その先には脳の精密な神経回路を配線する基盤機能を明らかにする手がかりもありそうです。これからも純粋なサイエンスを極めつつ、疾患の理解を通して創薬の種を見つけていきたい」と小山氏は今後の抱負を語ります。

さらに明るいAlexa Fluor 二次抗体
Alexa Fluor Plus Secondary Antibodies

Alexa Fluor Plus Secondary Antibodies卓越した輝度と優れた光安定性を兼ね揃えた蛍光標識二次抗体です。
独自開発の”PLUS” dye technologyと高度な交差吸着処理を組み合わせ、
従来品の倍以上のS/N比を実現しました。

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ライフサイエンス情報誌「NEXT」

当記事はサーモフィッシャーサイエンティフィックが発刊するライフサイエンス情報誌「NEXT」2018年3月号からの抜粋です。
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