土壌微生物の力を活かした植物病害防除技術の開発へ(理化学研究所バイオリソースセンター 李哲揆氏)-「NEXT」2018年5月号掲載

土壌微生物の力を活かした植物病害防除技術の開発へ(理化学研究所バイオリソースセンター 李哲揆氏)-「NEXT」2018年5月号掲載

デジタルPCRシステムを土壌中のマイナー微生物の定量に活用

李哲揆氏(理化学研究所バイオリソースセンター微生物材料開発室特別研究員)

李哲揆氏(理化学研究所バイオリソースセンター微生物材料開発室特別研究員)理化学研究所バイオリソースセンター微生物材料開発室(JCM)は、微生物分類の基準菌株の収集・保存・提供事業に加えて、健康と環境に関する研究に役立つ微生物のバイオリソース事業や独自の研究に力を入れています。JCM特別研究員の李哲揆氏は、植物の病原菌を抑制する土壌中の有用微生物を同定し、その作用機構の解明に取り組んでいます。「研究では、マイナーな菌も再現性良く定量することが必要」と語る李氏に、Applied Biosystems™ Quant Studio™ 3DデジタルPCRシステムの活用について伺いました。

トマト青枯病に効く有用土壌微生物の探索

青枯病菌と呼ばれる土壌中の細菌Ralstonia solanacearumは、トマトのようなナス科植物を含む200種以上の植物に感染し、その通水機能を急速に妨げ枯死に至らせることから、様々な作物の生産に甚大な被害を与える存在です。このような病原菌への防御に対して化学農薬を使用することに抵抗を示す消費者も多く、李氏らのグループでは減農薬の観点から微生物による防御技術を開発中です。「青枯病菌が存在しているにもかかわらず、トマトが病気にかかりにくい土壌がありました。まず、こうした土壌を材料に微生物のメタゲノム解析を行ない、青枯病菌と拮抗する微生物候補を絞り込んでいきました」と研究の経緯を語ります。そして青枯病菌を抑制する菌を同定し、研究を深めることにしました。

さまざまな条件で細菌を加え、トマトを栽培。[さまざまな条件で細菌を加え、トマトを栽培]

土壌微生物を絶対定量で高感度に定量

「対象とする細菌が、直接青枯病菌に作用するのか、それとも植物自身の免疫機能を上げるのか等、いくつもの作用機序が想定されます。その機序を明らかにするためには、様々な研究の局面で細菌の定量は欠かせません」と李氏。青枯病菌とこの細菌を土壌に接種すると、その量比はどう変化するのか、植物に定着する菌の量や菌が定着すると植物の組織にどう影響するのか。さらにこの細菌は土壌に存在しているだけなのか、それとも植物体にも定着しているのか。詳細な疑問に答えるため、解析対象の細菌に特異的な16S rRNA遺伝子を使ってデジタルPCRによる定量を進めています。「しかも解析対象の細菌のDNA量は、植物組織や土壌に含まれる他の微生物由来のDNAに比べると非常に少ないことが問題でした」と続けます。デジタルPCR法では、エンドポイントにおけるPCR増幅の有無を基に絶対定量するので、微量DNAを感度よく検出できます。また植物や土壌由来のPCR阻害物質の影響を受けにくいこともメリットだと、李氏は考えています。「解析対象は土壌由来のマイナー微生物で培養が難しく、汎用的なリアルタイムPCR法では標準物質による検量線作成にも手間がかかります。デジタルPCR法ならその必要がなく、感度良く定量可能」と付け加えます。

微生物資源の利活用を目指して

食に対する関心と安全性指向が高まり、安全で環境に負荷をかけない植物病害防除技術への関心が高まっています。李氏は、今回同定した細菌を微生物資材として、青枯病防除法の実用化を目指しています。さらに従来の化学農薬に代わる土壌消毒技術の開発も進めています。この消毒法の効果を評価するためには、消毒によって病原菌の量がどう変化するか定量する必要があります。ここでもデジタルPCR法を活用中です。「土壌中の微生物の状態を判断するために気軽に使えて便利ですね」と、李氏はその利便性に期待しています。土壌にとどまらず、環境由来の様々な試料における微生物モニタリングや有用微生物の活用研究がさらに進みそうです。

チップベースのコンパクトなデジタルPCRシステム
QuantStudio 3D デジタル PCR システム

QuantStudio 3dApplied Biosystems™ QuantStudio™ 3D デジタル PCR システムは拡張性に富んだチップを使い、シンプルなワークフローで測定します。
絶対定量なので標準曲線を必要とせず、低濃度サンプルの定量やRare Variantの検出に適しています。

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ライフサイエンス情報誌「NEXT」

当記事はサーモフィッシャーサイエンティフィックが発刊するライフサイエンス情報誌「NEXT」2018年5月号からの抜粋です。
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