間葉系細胞による免疫細胞の「末梢教育」に着目し、アレルギーや慢性疾患の機序解明へ(千葉大学イノベーション医学領域 倉島洋介 氏)-「NEXT」2018年12月号掲載

間葉系細胞による免疫細胞の「末梢教育」に着目し、アレルギーや慢性疾患の機序解明へ(千葉大学イノベーション医学領域 倉島洋介 氏)-「NEXT」2018年12月号掲載

粘性が高いサンプルでもAttune NxT Flow Cytometerで瞬時に解析

倉島洋介 氏( 千葉大学大学院医学研究院イノベーション医学領域准教授・写真左)

倉島洋介 氏( 千葉大学大学院医学研究院イノベーション医学領域准教授)免疫細胞の一種であるマスト細胞(肥満細胞)は、アレルギーや炎症を引き起こすことが知られています。50年ほど前、石坂公茂氏によるIgEの発見を契機に、アレルギーでのマスト細胞の詳細な役割が分かってきました。興味深いことに組織によってマスト細胞の顆粒成分や発現している遺伝子が異なっています。しかし、その意義は未だに不明でした。千葉大学の倉島洋介氏は、コラーゲンなどの細胞外マトリックスの産生によって組織を支持する線維芽細胞などの間葉系細胞が、マスト細胞に発現する遺伝子を調節することを報告しました。倉島氏は、各組織の間葉系細胞が未成熟な免疫細胞に対して組織・臓器に適した「特異性」を付与することを「免疫末梢教育」と呼び、その機序解明に取り組んでいます。

マスト細胞の性質は間葉系細胞との関係で決まる

マスト細胞は骨髄で分化後、未熟な状態で血液の循環を介して全身に分布していきます。しかし、皮膚や血管などの結合組織に存在するマスト細胞と、肺や腸管などの粘膜組織に存在するマスト細胞とでは、放出する顆粒成分や発現する受容体が異なっています。例えば、炎症などのダメージで細胞内から放出される細胞外ATPに対する感受性は、皮膚に存在するマスト細胞では低く保たれています。「これはマスト細胞上の細胞外ATPに対する受容体の発現が他の組織に比べて皮膚では低く、その発現が皮膚の線維芽細胞によって抑制されるからだということを我々は明らかにしてきました。さらに皮膚の線維芽細胞がもつ機能を抑制して、腸管様の線維芽細胞にすると、マスト細胞の遺伝子発現パターンは腸管のマスト細胞と似たものとなり、マウスでは重篤な皮膚炎が起きました。組織に特有な恒常性の維持には、間葉系細胞による免疫細胞の適切な制御が必要であり、そこに異常があると組織特異性が損なわれ、組織破壊を伴う慢性疾患につながるのかもしれない」と倉島氏。現在、松村研究員(写真右)を始めとするメンバーと共に免疫細胞の最終的な成熟をもたらす組織や臓器に特異的な間葉系細胞集団を細分化して特定する研究を進めています。

その日の実験は、その日のうちに結果の考察までを

「学生の頃は”1000本FACS”と言われるほど(笑&涙)、昔からフローサイトメーターのヘビーユーザーだったので、いつか”mycytometory”を欲しいと思っていました。またその日の実験はその日のうちに結果を考察するという、前ボスの國澤純先生スタイル(現: 医薬基盤・健康・栄養研究所)を貫くために、新しくラボを持って1年が経ったタイミングでフローサイトメーターの選定を開始しました。マウスの組織間比較を行うので、腸管をはじめ様々な臓器から細胞を単離して解析します。中にはサンプル液が粘稠になる組織もあり、詰まらずに解析できることは選定の大きなポイントでした。Attune NxT Flow Cytometerは流速を上げても精度よく解析できることをデモで確認して導入。この装置なら”当日中”に測定を終了できるので重宝しています。また操作が簡単なので、2回ほど説明を受けながら使えば、3回目にはデータ解析まで一人でできるので、今では他のスタッフも解析で使っています」(倉島氏)。さらに「現在、2本のレーザーで7色を同時に測定していますが、将来的にはレーザーの追加も想定しています。一つの細胞集団と思っていても、異なる集団に分かれる可能性もあるからです」と続けます。コンパクトながら、レーザーを追加できる拡張性を有するAttuneNxT Flow Cytometerは、倉島氏のラボに適しているようです。

粘膜間葉系細胞群の複雑な機能を読み解く

生体の最前線に位置する腸管などの粘膜組織では、上皮細胞が重要な生体のバリア機能を担っています。最近、その支持層に分布する線維芽細胞、筋線維芽細胞などの間葉系細胞が上皮細胞の直下や絨毛の陰窩に局在し、その分化をも調整するという多彩な機能をもつことが明らかになってきました(粘膜バリア後方支援)。また、間葉系細胞の重要な機能である組織修復の変遷は、腸管狭窄の原因となる「線維化」を導き、炎症性腸疾患のクローン病でも「線維化」が起きることがあります。線維化が肺で起こると「特発性肺線維症」の原因にもなります。倉島氏の研究室では、粘膜の恒常性維持や、線維化などの病態形成における粘膜間葉系細胞の重要な機能を明らかにし、間葉系細胞による「免疫末梢教育」「粘膜バリア後方支援」「線維化」をキーワードに創薬・臨床につながることを目指した基礎研究をさらに進めていきます。

最大4レーザーで14色検出可能なフローサイトメーター
Attune NxT Flow Cytometer

Invitrogen™ Attune™ NxT Flow Cytometerは、アコースティックフォーカシング技術を使用し、「素早く・簡単・詰まりづらい」測定を実現します。

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ライフサイエンス情報誌「NEXT」

ライフサイエンス情報誌「NEXT」当記事はサーモフィッシャーサイエンティフィックが発刊するライフサイエンス情報誌「NEXT」2018年12月号からの抜粋です。
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