遺伝子改変マウスで生体内における多彩な糖鎖機能を探る(筑波大学医学医療系 工藤崇 氏、筑波大学大学院人間総合科学研究科 布施谷清香 氏)-「NEXT」2018年12月号掲載

遺伝子改変マウスで生体内における多彩な糖鎖機能を探る(筑波大学医学医療系 工藤崇 氏、筑波大学大学院人間総合科学研究科 布施谷清香 氏)-「NEXT」2018年12月号掲載

糖タンパク質のウェスタンブロッティングはiBright Imaging Systemで感度よく解析

工藤 崇 氏(筑波大学医学医療系解剖学・発生学研究室、生命科学動物資源センター准教授)、布施谷清香 氏(筑波大学大学院人間総合科学研究科生命システム医学専攻博士課程1年)

工藤 崇 氏(筑波大学医学医療系解剖学・発生学研究室、生命科学動物資源センター)、布施谷清香 氏(筑波大学大学院人間総合科学研究科生命システム医学専攻)「 糖鎖および糖タンパク質の生理機能を、生体レベルの表現型解析で明らかにし、その機構を分子レベルで解明することを目的に研究を進めています。これまでに10種類以上の糖鎖合成関連酵素のノックアウトマウスを作製しましたが、現在は、ムチン型糖鎖合成関連遺伝子のコンディショナルノックアウトマウス(cKO)の表現型解析を行い、組織特異的な糖鎖機能の解明を進めています」と筑波大学の工藤崇氏は話します。大学院生の布施谷清香氏は、腎糸球体足細胞特異的cKOの表現型解析からムチン型糖鎖の役割を探索中です。

ムチン型糖鎖合成酵素の遺伝子改変マウスによる表現型解析

糖タンパク質に結合する糖鎖には、アスパラギンに結合するN- 結合型糖鎖とセリンあるいはスレオニンに結合するO- 結合型糖鎖があります。O- 結合型糖鎖の中でN-アセチルグルコサミンという糖が最初に結合するものをムチン型糖鎖と呼びます。気管、消化管、生殖腺などの内腔を覆う粘液成分であるムチンがこの糖鎖を多数結合していることからそう呼ばれています。ムチン型糖鎖の役割は粘液による細胞の保護や異物の侵入防御です。また、がんや炎症性疾患ではムチンコアタンパク質の発現変化が知られています。
「私たちは、造血組織におけるO- 結合型糖鎖の重要性を明らかにするために、その合成に必須の C1GalT1酵素を造血系特異的にノックアウトしたマウス(Mx1-C1マウス)を作製しました。このマウスでは重度な血小板減少や巨大血小板の出現、出血時間の延長がみられ、巨核球の最終分化段階である胞体突起形成能が著しく低下していました。一方、ムチン型糖鎖で修飾される巨核球、血小板特異的なGPⅠbαタンパク質は血小板凝集に必須な分子であり、先天性血小板減少症(Bernard-Soulier 症候群)の原因遺伝子のひとつです。このGPⅠbαの転写量はMx1-C1マウスの骨髄や血小板において野生型マウスと変わりませんが、そのタンパク質量は著しく低下していました。以上より、ムチン型糖鎖は巨核球最終分化に必須であり、糖鎖欠損によるGPⅠbαタンパク質の減少がその原因である可能性が高いことが示唆されました」と工藤氏は研究の一端を語ります。
他にもC1GalT1酵素の分子特異的シャペロンであるCosmcをマクロファージ特異的にノックアウトし、腹腔内常在マクロファージのアポトーシス細胞貪食におけるムチン型糖鎖の役割を明らかにする研究も手がけました。

腎糸球体足細胞におけるムチン型糖鎖の役割

工藤氏の元で研究を進める布施谷氏は、Cosmcの足細胞特異的cKOマウスの解析を進めています。「足細胞は、腎臓の糸球体で突起を伸ばして毛細血管の周りを覆っていて、血液中の老廃物のろ過機能に関わります。このcKOマウスを解析すると、足突起の形態異常やタンパク尿などの異常がみられました。そこで足細胞の糖タンパク質をウェスタンブロッティングで解析したところ、cKOマウス特異的に分解される糖タンパク質を確認しました」と布施谷氏。
「この実験ではiBright Imaging Systemでウェスタン解析を行っていますが、SmartExposureが便利ですね。最適な露光時間を自動で調整するので、短時間で質の良い画像が撮影できます。初めて解析するサンプルや濃度を変えたタンパクを検出する際も露光時間に悩まなくなりました。またできる限り実験結果を記録しておきたいので、マニュアルで露光時間を変えた撮影も行っています。ターゲットのタンパク質と複数の分解産物の量的変化をさまざまな条件で比較するために濃く撮影したり、30秒ずつ異なる時間を試してみたり。この装置はタッチパネルで直感的に使えるので、スマホみたいに気軽に結果を記録できます」と続けます。
工藤氏も「以前の装置は、外付けのパソコンで解析を行っていたため、ソフトの使い方に慣れる必要もありました。しかしこの装置は一体型で使いやすく、これから実験を始める学生への操作説明にも時間がかからないようです」とコメントします。

糖鎖研究のさらなる進展へ

「分泌および膜タンパク質のほとんどに翻訳後修飾である糖鎖が付加されており、様々な生命現象に重要な役割を持つと考えられています。糖鎖機能の研究と共に、がん細胞表面の特異的糖タンパク質に対する抗体作製など、糖鎖構造の面からも応用研究にアプローチしてさらに研究を深めていきたい」と工藤氏は今後の研究を語ります。

ウェスタンブロッティングの撮影は、ますます簡単に
iBright CL1000|FL1000 Imaging System

Invitrogen™ iBright™ Imaging Systemは、ウェスタンブロッティング用の化学発光・蛍光撮影装置です。
SmartExposure™ テクノロジーで最適な露光時間を自動で提示し、バーチャル画像で時間設定すれば、目的の画像を簡単に得られます。

iBright CL1000 Imaging System | iBright FL1000 Imaging Systemの詳細情報はこちらから

ライフサイエンス情報誌「NEXT」

当記事はサーモフィッシャーサイエンティフィックが発刊するライフサイエンス情報誌「NEXT」201※年※月号からの抜粋です。
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